「石油需要は2050年までに8割減る」。危機的なシナリオを前に、事業を抜本的に変える。石油精製能力の削減、低炭素ソリューションの開発、ガソリンスタンドの「よろず屋」化──。脱炭素は逆風ではなく、企業を強くするチャンスと説く真意とは。
(聞き手は 本誌編集長 磯貝 高行)

木藤俊一[きとう・しゅんいち]氏
1956年生まれ。神奈川県出身。80年慶応義塾大学法学部卒、出光興産入社。執行役員経理部長などを経て2017年副社長、18年社長。19年、昭和シェル石油との統合新会社の社長に就任。22年から石油連盟会長も務める。販売畑を歩み、盛岡支店長時代には販売店の経営改革などに注力。経営統合後のかじ取りを担い「人が中心の経営」を重視。社員との対話を重ね、企業理念「真に働く」を成文化した。自他共に認める阪神タイガースファン。
1月末現在、今期(2023年3月期)の連結純利益は2期連続で最高を更新すると見込まれています。
外部要因による影響はかなりあります。様々な資源価格が上昇していますから。特に石油製品の場合は備蓄義務があり、大量の在庫を抱えているので、原油が乱高下すると評価損益も大きく増減します。あくまでも会計上の損益なので、手放しで喜べるものではありません。
国内の石油産業は再編で3グループ体制になりました。需給のバランスが取れ、市場も比較的安定しています。新型コロナウイルス禍が長引く中では、なおさら供給不安を起こしてはいけない。しっかりサプライチェーン(供給網)を維持してきた結果、安定した利益が得られているとも、一方では言えると思います。
いわゆる「ガソリン補助金」は一部で批判が強いです。恩恵を受ける石油業界としてどう受け止めていますか。
まず、我々がお願いしてやっているものではない、とはっきり申し上げておきます。石油連盟としても公表していますが、政府側から事前相談があったとき、反対しました。
「ガソリン補助」延長求めず
本当ですか。なぜでしょう。
当初の枠組みは政府のインフレ対策の一環で、ガソリン価格の上昇分については1リットル当たり5円を上限に補助すると。ただ、小売価格は地域の競争状態や販売数量などを踏まえてSS(サービスステーション)業者が決めることなんです。
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