明るさ戻ってきた観光業だが、その先には人口減少という重い課題が待ち構える。星野リゾートは海外進出を加速。「円だけでなくドルやユーロでも稼ぐ」会社への脱皮を図る。米国の進出地を1年以内に決定し、温泉旅館を開業する計画だ。
(聞き手は 本誌編集長 磯貝 高行)

星野佳路[ほしの・よしはる]氏
1960年長野県生まれ。慶応義塾大学経済学部を卒業後、米国コーネル大学ホテル経営大学院修士課程修了。91年に父から経営を引き継ぎトップに就任。経営が破綻したリゾート施設などの再生も手掛けながら事業を拡大してきた。2022年12月時点で運営する施設数は63カ所。
日本の観光業界をけん引する立場から、新型コロナウイルス禍の3年間をどう振り返りますか。
2020年は4月に入ると需要が急減速しました。この段階ではスペインかぜなどを念頭に「18カ月ほどで解決する」と捉えて売上高を維持する方法を考えました。スペインかぜの感染拡大は第一波が大きく、次第に沈静化した。「コロナ禍も同じ」と予測して手を打ったのです。
実際には感染拡大の波はだんだん大きくなったのですが、第3波(21年1月ごろ)以降は宿泊予約が入るようになりました。顧客の意識はこの頃から変わったと思います。22年10月に水際対策がなくなり、インバウンドが戻り始めた。「コロナ禍は22年9月までの30カ月で終わった」というのが私の印象です。
星野リゾートには宿泊客が対象の満足度調査があります。20年6月から宿泊の決定要因に「コロナ対策が十分に取れている」の項目を加えました。当初、コロナ対策は決定要因の5位以内でしたが、次第に下がり今は10位くらいです。
収益面からはどのくらいの回復状況でしょうか。また、地域によって違いはあるでしょうか。
星野リゾートの場合、回復状況は宿泊施設の立地条件によって4パターンに分かれます。
1つ目は温泉地にある旅館。21年に早くも施設の稼働率がコロナ禍前の水準に近づき、22年は稼働率、単価ともにコロナ禍前を上回っています。運営する63施設の3分の1以上が温泉旅館であり、全体の収益を引っ張っています。2つ目は都市周辺の観光地の施設。稼働率はコロナ禍前に戻りきっていませんが単価は急上昇し、収益は好調です。
3つ目は都市から飛行機で行く観光地。稼働率はコロナ禍前を下回り回復ペースは都市周辺の観光地より緩やかです。ただ、単価は上がり収益的な問題はありません。4つ目が一番回復が遅れている都市のホテル。ここも水際対策が終わり、インバウンドが戻りつつあります。
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