売上高10兆円の目標を掲げ、クルマの電動化の中核になる動力装置で世界のライバルと激しく戦う。 一方で、自ら育てた世界一のモーターメーカーの後継者問題は解決できないままだ。 それでも「経営者に必要なのは業績向上への覚悟と責任感」と今も言い切る。
(聞き手は 本誌編集長 磯貝 高行)

永守重信[ながもり・しげのぶ] 氏
1944年生まれ。67年職業訓練大学校(現・職業能力開発総合大学校)電気科卒。73年に日本電産を創業。社長に就任し、世界一のモーターメーカーに育てた。2014年から会長を兼務。18年6月に会長CEO(最高経営責任者)、21年6月に会長専任となったが、22年4月にCEOへ復帰した。
2023年3月期は上期(22年4~9月期)の連結売上高が過去最高を更新するなど、業績は好調です。ご自身ではどのように評価されていますか。
まあ、私としては不満な結果ですね。本来はもっとよかったはずだと思っていますから。企業というのは、やっぱり業績なんですよ。全ては結果ですから。僕は(1973年に創業して以来)長く(社長、会長、CEO=最高経営責任者=を)やってきて、業績を伸ばしてきました。
2008年秋のリーマン・ショックの時も、赤字になる会社が多い中で黒字を保ちました。赤字なんか絶対にあってはならないし、わが社では(売上高)営業利益率が10%以下だと赤字と同じと言っているくらいです。それほど業績にはこだわるんです。
「事業環境が悪いから赤字でも仕方がない」なんて考えはもってのほか。黒字であっても低い利益率で満足なんかしないというわけですか。
赤字は倒産の入り口です。だから、企業というのは赤字は絶対に出してはいけない。その考え方を創業以来、徹底してきたんです。リーマン・ショックの時、(グループの)全社から膨大な数のコスト削減策を集めて実行し、売上高が半分になっても利益を出せるようにするWPR(ダブル・プロフィット・レシオ、後に名称は変更)という独自の対策を即座に実行しました。それで危機の前よりも、むしろ強い体質にしたくらいです。
その際には、社員に5%の賃金カットをお願いして、僕も報酬をゼロにした。そして業績が回復した後、社員にその5%分に利息を付けて返しましたよ。そのくらい徹底しなければいけないと思っているんですよ。
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