破綻寸前だった米国子会社で培った危機対応力を武器に再成長へとかじを切る。就任早々、工場の4割閉鎖など痛みを伴う大規模な構造改革を打ち出した。環境が激変するタイヤ業界で盟主の座をどう守るのか。
(聞き手は 本誌編集長 磯貝 高行)

石橋秀一[いしばし・しゅういち] 氏
1954年生まれ、77年静岡大学人文学部卒、ブリヂストンタイヤ(現ブリヂストン)入社。89年米ファイアストンタイヤ アンド ラバーカンパニー派遣、米ブリヂストン/ファイアストンでは副社長も務め、大規模リコール(回収・無償修理)問題などに直面した同社の経営立て直しに当たる。2003年に帰国しブリヂストン復帰、05年執行役員、12年常務執行役員、14年専務執行役員、16年執行役副社長、19年代表執行役副会長、20年から現職。福岡県出身。
2022年12月期は連結売上高が初めて4兆円を超え、営業利益も4700億円と好業績となりそうです。最終赤字となった就任1年目の20年12月期から急回復した要因は何ですか。
やることと、やらないことを明確にした結果が出てきています。
20年3月の就任前から、冷静に事実をベースに過去を見直す作業を始めました。すると、15年が売り上げのピークでその後はほぼ横ばいが続き、営業利益は毎年どんどん下がっていました。中期経営計画は全部達成できていません。抜本的に改革しないと、このままでは大変なことになると危機感を覚えました。
1988年に当社が米ファイアストンを買収した後、米国に行きましたが、そこで倒産の危機が2回ありました。買収当初、ファイアストンの最終損益は約500億円の赤字でしたから本当に修羅場でした。1日1億円以上の損失が出ているわけです。2000年にはタイヤ650万本のリコール(回収・無償修理)があって同社は倒産寸前になりました。この間にチャプター11(日本の民事再生法に相当する米連邦破産法11条)の適用を3度考えました。そこでの実感から、悪くなったらすぐに手を打つ、というのが身に染み付いているんです。
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