世界ナンバーワンアパレルブランドになるべく、海外戦略を一段と加速させる。不確実性が高まる世界で、希代の経営者はどんなかじ取りを考えているのか。柳井氏の考えるリーダーのあるべき姿とは。

(聞き手は 本誌編集長 磯貝 高行)

(写真:的野 弘路)
(写真:的野 弘路)
PROFILE

柳井正[やない・ただし]氏
1949年生まれ。71年に早稲田大学卒業後、ジャスコ(現イオン)に入社。72年小郡商事(現ファーストリテイリング)入社、84年社長。2002年に会長に退いたが、05年に復帰してから現職。08年にGOVリテイリング(現ジーユー)の会長、11年にリンク・セオリー・ジャパンの取締役など、子会社17社で取締役を務める。海外進出を積極的に進めており、18年8月期からは海外ユニクロの売り上げが国内を上回っている。山口県出身。

2022年8月期には2期連続で最高益を更新しました。22年はどのような年だったでしょうか。

 新型コロナウイルスの感染が拡大しましたが、ウィズコロナの生活が次第に定着し始め、混乱に一区切りがついたように感じています。時代の転換点だったのでしょうね。外出を制限された時間に、それぞれの人が色々なことを考えたでしょう。

 21世紀になっても、ウクライナ危機のような事態が起こり得るという現実を見ると、やはり人間は変わっていないと思ってしまいますね。過去の歴史や記録を皆もっと知らなければならない、と僕はいつも言っているんです。

 過去があって、現在があって、未来がある。一足飛びに未来だけが訪れることはありません。過去や現在を知らずに「未来はこうなる」と予見はできない。全ては一連の流れの結果ですよね。

 「歴史は韻を踏む」とよく言うでしょう。過去と全く同じ出来事は起こらないとしても、現代と似た出来事は起こっている。だから歴史から学んで「こういう未来になるんじゃないか」と知っておかないといけない。

 経営者は、政治家のように「想定外でした」とは言えないんですよ。言ったらその時点で経営者として失格。だから、経営者は特に歴史を勉強しておく必要があると思っています。

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