キッコーマンと和食文化を世界に羽ばたかせただけでなく、日本の経済界をけん引してきた。政治が迷走し、経済成長も停滞する日本の行く末を憂い、再び民間臨調のトップに。国内外で課題が山積する中、どう挑もうというのか。

(聞き手は 本誌編集長 磯貝 高行)

(写真=北山 宏一)
(写真=北山 宏一)
PROFILE

茂木友三郎[もぎ・ゆうざぶろう] 氏
1935年千葉県生まれ。58年慶応義塾大学法学部卒業、キッコーマン入社。61年米コロンビア大学経営大学院(経営学修士課程)修了。70年代初めには来年で完成50年となる米国工場の建設を主導。95年社長CEO(最高経営責任者)、2004年会長CEO、11年から取締役名誉会長 取締役会議長。米コロンビア大で1994年から理事、2000年から名誉理事。14年から日本生産性本部会長。22年6月から令和国民会議(令和臨調)共同代表。

民間臨調として約20年ぶりとなる「令和国民会議(令和臨調)」を6月に発足させました。経緯をうかがえますか。

国会議員らも議論に加わる(写真右が茂木氏、左は岸田文雄首相)
国会議員らも議論に加わる(写真右が茂木氏、左は岸田文雄首相)

 世界でポピュリズム(大衆迎合主義)が台頭しています。フランスやドイツ、米国、驚いたのはスウェーデンでも。福祉や年金、経済成長などの問題が解決されずに残っていることに国民が気づき、解決には強力なリーダーが必要だと感じているのです。「俺が総理、大統領になれば全部解決してやる」という人が出てくると、国民はそちらになびきます。

 このままでは日本でもポピュリズムが台頭するリスクはあります。民主主義が危機にひんする可能性を考えて、今のうちにとにかく問題を解決しようと。そのために我々も何か動くべきじゃないかということです。

 1992年に亀井(正夫・元住友電気工業会長)さんがやった民間政治臨調は政治改革を進め、私も関わった21世紀臨調ではマニフェスト選挙などを実現しました。

 ところが、その後臨調を休んでいた間、未解決の問題がどんどん増えた。このままでは問題が大きくなると、経営者や労働組合の指導者、官僚OB、ジャーナリストらが言い出した。もう1回、臨調を立ち上げてはどうかという話が新型コロナウイルス禍の前ごろから出てきたんです。

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