「株式の非上場化」を視野に入れ、会社再編案の検討が大詰めに近づいてきた東芝。物言う株主(アクティビスト)と長期保有する投資家の利害が対立し、難しい局面にある。“板挟み”を宿命づけられた東芝社長は、「直球」で勝負に挑む。

(聞き手は 本誌編集長 磯貝 高行)

(写真=遠藤 素子)
(写真=遠藤 素子)
PROFILE

島田太郎[しまだ・たろう]氏
1966年、大阪府生まれ。90年甲南大学理学部(現在は理工学部)卒、新明和工業入社。99年米SDRC(後にUGSコーポレーションとシーメンスAGと合併)入社、2010年シーメンスPLMソフトウェア日本法人社長兼米国本社副社長。15年シーメンス専務執行役員。18年東芝入社、19年東芝デジタルソリューションズ取締役常務、20年東芝データ代表取締役CEO、東芝執行役上席常務。22年3月東芝代表執行役社長兼CEO、6月から取締役にも就任。(写真=遠藤 素子)

約半年前の社長就任、東芝では史上最年少(55歳)となりますね。外資系出身で、今までとは異なるトップです。

 確かに外資系企業での経歴は長いのですが、大学卒業後に日本企業で10年間の下積みを経ています。異質というよりも、自分では外資系と日系、両方の企業文化を持つデュアル(2つの要素を持つ)な人間だと思っています。

 年齢のこともよく聞かれますが、外資のソフトウエア会社で社長に就いた際も43歳でした。また、かつて技術職から営業本部長に就任したときも「頭の固い人間に営業の仕事が勤まるのか」と周りから総スカンにあった経験もあります。ただ、目に見える成果を出せば、おのずと評価は変わるものです。

 私自身は年齢を気にしていませんが、複雑な思いで見られていることもよく分かっています。東芝の社長は大役ですから。最も大切なのは「私心で動くことは一切あってはならない」ということです。自分の間違いを認めないといった、せこい方法ではいけません。もし何か起きたときには、自分の責任で辞める覚悟を持ってこの職務と向き合っています。

東芝は2015年の不正会計発覚から混乱が続きました。社員は自信を失ってしまったのではないでしょうか。

 落ち込んでしまった社員もいると思いますが、私の周りでは大勢が意気揚々と働いていますよ。興味ある分野を突き詰めたい人が入社する会社だからですね。東芝はエリート集団に見られがちでしたが、上司に対しても「さん」づけで呼ぶ、フランクな企業文化があります。私も技術者なので、技術力を軸に話し合える人が多いのは楽しくて仕方ないですね。

半世紀以上も前になりますが、土光敏夫さんが東芝を再建すべく社長に就任した際、「一緒に、猛烈に働こう」とメッセージを発信しました。

 私は真逆で、「午後5時に帰りましょう」と社内に発信しています。向かうべき目標が定まっていた時代とは異なり、今は自分で目標を見つける時代です。私も飛行機の設計をしていた頃は月200時間ほど残業していましたが、視野が狭まるという副作用もありました。

 今は「何だそれは?」と驚かれるようなビジョンを温めています。それはデジタルや量子の世界で、東芝が新たなプラットフォームを打ち立てる未来です。その実行策を一人ひとりが練るには、自由に発想できる時間が不可欠。日本画や中国画も画面を塗りつくさず余白を残しますよね。その隙が鑑賞者の想像力をかき立てるからです。現代の経営も社員の創造性を引き出すことが重要です。

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