2020年1月にポーラ初の女性社長に就任後、すぐに新型コロナウイルス禍に見舞われた。厳しい環境下で基幹ブランドの刷新を成功させ、次は海外売上比率50%を目指して奮闘する。「一生働く」と決め、女性活用のモデルとなったリーダーの姿に迫る。

(聞き手は 本誌編集長 磯貝 高行)

(写真=村田 和聡)
(写真=村田 和聡)
PROFILE

及川美紀[おいかわ・みき] 氏
1969年生まれ。宮城県石巻市出身。91年東京女子大学文理学部英米文学科卒。ポーラ化粧品本舗(現ポーラ)に入社し、営業部に配属。埼玉エリアマネジャー、商品企画部長を経て、2012年に商品企画・宣伝担当執行役員に就任。14年には商品企画・宣伝・美容研究・デザイン研究担当取締役に就任し、20年1月から現職。ダイバーシティー&インクルージョンを経営戦略の一つに掲げ、さまざまな施策を打ち出す。

社長に就任された直後の新型コロナウイルス禍でした。改めてこの2年半を振り返っていかがでしょうか。

 一番心配したのは商売を止めずに、いかに従業員とビジネスパートナーの感染を防ぐかでした。全国の店舗を支えるビジネスパートナーは、日々の化粧品の売り上げから収入を得ています。家賃や生活費の出費は続きますから、資金の貸し出しや、国の補助金を申請するサポートなどを継続してきました。

コロナ禍で基幹商品の危機

テレワークが普及し、外出時のマスク着用が当たり前になりました。化粧品の需要は落ちたのではないですか。

 需要は分かりやすく落ちました。ちょうど2020年9月に、35年続く基幹ブランド「B.A(ビーエー)」が全面リニューアルする計画でした。しかし、20年4月には緊急事態宣言が発令され、テレビCMを制作する撮影クルーが集まれない、記者発表会の予定も組めないという状況に追い込まれ、9月に発売ができるのか。危ぶまれました。
 「発売を半年遅らせたらどうか」「予定通り発売して、鳴かず飛ばずだったらどうするのか」──。

 厳しい判断を求められました。当社は訪問販売などリアルが得意な老舗企業で、デジタルは苦手です。化粧品のテスターも使えず、百貨店なども店を閉める中で、オンラインで当社の基幹ブランドを販売できるのかという不安がありました。