米グーグル傘下の巨大動画プラットフォーム「YouTube(ユーチューブ)」。20億人のユーザーを抱え、エンターテインメントや教育、報道など各方面に影響力が広がる。買収の立役者だったトップに、次なる飛躍のための戦略を聞いた。

(聞き手は 本誌編集長 磯貝 高行)

PROFILE

スーザン・ウォジスキ[Susan Wojcicki] 氏
1968年、米カリフォルニア州出身。99年に米グーグル初のマーケティングマネジャーとして入社し、消費者向け製品の初期開発を主導した。グーグル創業者のラリー・ペイジ氏とセルゲイ・ブリン氏は98年、ウォジスキ氏が住む自宅のガレージに最初のオフィスを構えた。2002年からはグーグルの広告製品に携わり「グーグルアドセンス」などを手掛ける。06年のユーチューブ買収に貢献し、14年からCEO(最高経営責任者)を務める。5人の子供を持つ母。

「ユーチューブ」は誕生から17年がたち、世界でおよそ20億人が視聴する巨大なプラットフォームとなりました。この17年間でユーチューブが果たした役割とは何でしょうか。

 3つの分野でメディアとエンターテインメントを大きく変えたと思います。まず、本当に多くのチャンネルが存在するようになった。新しいタイプのコンテンツが生まれ、伝統的なメディアでは成功が難しかったであろう人たちが視聴者と直接つながるようになりました。

 特に日本は新しいメディアとテクノロジーを掛け合わせることにおいてはリーダーです。最近は「バーチャルユーチューバー(Vチューバー)」と呼ばれるクリエーターが活躍していますが、これはもともと日本から始まったものです。

 次に、教育の分野です。学校がコロナ禍で閉まっている間でも学生たちはオンラインで学べるようになったし、様々な境遇の子供たちが動画で学習できるようになった。授業中に先生が言ったことが分からなくても、後で動画を見たら理解できることもある。教育の民主化がユーチューブで起こったのだと思います。

 そして3つ目に、従来型のエンタメのデジタル化です。アニメや映画、音楽といったエンタメに新しい流通経路をもたらしました。ミュージシャンを紹介するチャンネルで新たな視聴者を開拓することもできますし、アップロードした音楽でミュージシャンが収益を得る方法も提供しています。私たちは従来のメディアの方たちとも協力しながら、ビジネスを変革するお手伝いをしています。

次ページ 人々の「知る権利」は守る