顧客情報管理のクラウドサービスで世界トップをひた走る米セールスフォース。働きやすい会社づくりや巨額買収など、その一挙一動が注目を集める。変化の大きな時代、経営において重視する価値とは何かを聞いた。

(聞き手は 本誌編集長 磯貝 高行)

PROFILE

マーク・ベニオフ[Marc Benioff] 氏
1964年、米カリフォルニア州出身。86年、南カリフォルニア大学で経営学の学士号を取得。卒業後、米オラクルに入社し、社歴上で最も年齢の若いバイスプレジデントに就任した。99年、サンフランシスコでセールスフォース・ドットコム(現セールスフォース)を設立。世界経済フォーラム評議員会のメンバーとして名を連ねるほか、サンフランシスコにおける第4次産業革命の世界経済フォーラムセンターの会長を務めている。南カリフォルニア大学の評議員も務める。(写真=的野 弘路)

親日家と伺っています。久々の来日ですが、日本市場をどう見ていますか。

 日本法人を設立してから20年以上がたちました。米国で1999年に会社を発足させ、初めての海外拠点として翌年に進出したのが日本でした。米国のソフトウエア会社がよい日本企業になるには長い時間がかかると考え、早く進出したのです。

 今の日本は進出当時と似ており、経済を導き、助けになる企業を必要としていると感じます。

 当社がその役割を果たせるでしょう。顧客情報管理のクラウドサービスで世界において高いシェアを持ち、すべての顧客や開発者、セールスフォース製品を広げるパートナーであるトレイルブレイザーなどを含むエコシステムが成長しています。

 日本では2018年、1億ドル(約135億円)の「ジャパン・トレイルブレイザー・ファンド」を設けました。出資先は現在67社に上ります。

セールスフォースには働きやすい会社という印象があります。

 当社では世界で7万7000人の従業員が働き、23年1月期は約320億ドルの売上高となる見通しです。グローバルで働きやすい企業を目指しており、日本で「最も働きがいのある企業」に選ばれていることを誇りに思います。

 現在、日本に3500人以上の従業員がいて、そのうち3分の1以上を女性にするという目標に順調に向かっています。これは平等を重視する私たちにとって重要なことです。創業以来続けている製品、株式、就業時間の1%を社会貢献に使う私たちの「1-1-1モデル」を日本でも導入しています。

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