このインタビューとの連動記事『老舗セイコーが挑むDX 脱・時計頼みで第2の創業』も合わせてお読みください。

高級腕時計「グランドセイコー(GS)」の海外展開、不採算事業の立て直しなどを主導。老舗グループのコーポレートガバナンス(企業統治)改革にも取り組んできた。創業家出身のトップが描く、これからのセイコーの姿とは。

(聞き手は 本誌編集長 磯貝 高行)

PROFILE

服部 真二[はっとり・しんじ] 氏
1953年、東京都生まれ。75年慶応義塾大学経済学部卒業後、三菱商事入社。84年に精工舎(現セイコータイムクリエーション)入社。セイコーウオッチ社長などを経て、2010年セイコーホールディングス社長。12年から同社会長兼グループCEO(20年からグループCCOも兼務)。音楽やスポーツに造詣が深く、会社のイメージソング「時代とハートを動かすセイコー」は自ら作曲。高校時代には全日本テニス選手権で準優勝を果たした。(写真=的野 弘路)

5月に公表した新中期経営計画で、時計の会社から「ソリューションカンパニー」への変化を打ち出しました。どんな会社の形を目指すのですか。

 セイコーホールディングス(HD)は持ち株会社で経営権や人事権を持ち、その下に事業会社がたくさん連なっています。いわば「束ねる」という形態です。これからは「つないでいく」ことが重要だと思っています。10月から社名を「セイコーグループ」に変えるのもそうした思いからです。

 創業140年を迎えた2021年、「革新へのあくなき挑戦で、人々と社会に信頼と感動をもたらし、世界中が笑顔であふれる未来を創ります。」というパーパス(存在意義)をつくりました。込めたのは、社会課題を解決するソリューションカンパニーになるという思い。そうでなければ、サステナブル(持続可能)な会社になり得ないと考えました。

 4月からは全体を3つの戦略ドメインに分けました。1つ目は感性に訴える価値創造を目指す「エモーショナルバリューソリューション(EVS)」、2つ目は電子デバイスや半導体関連などの「デバイスソリューション(DS)」。3つ目は業績が絶好調の「システムソリューション(SS)」です。

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