感染症拡大やウクライナ危機の逆風下で、2022年3月期に過去最高益を更新した。けん引したのが、バイオ医薬品の開発・製造受託(CDMO)が好調なヘルスケア部門だ。業態転換への意気込みに加え、米ゼロックスとの協業についても語った。
(聞き手は 本誌編集長 磯貝 高行)

後藤禎一[ごとう・ていいち] 氏
1959年富山県生まれ。83年関西学院大学社会学部卒業後、富士写真フイルム(現富士フイルムホールディングス=HD)入社。シンガポールや中国に赴任し、主にヘルスケア事業を担当してきた。富士フイルムHDの取締役、富士フイルムの常務、専務などを経て2021年6月から現職。趣味はゴルフ、アジア歴史探究。(写真=北山 宏一)
2022年3月期の連結純利益は前の期比17%増の2111億円と、2期連続で最高益を更新しました。売上高も2兆5257億円と15%増えました。
「ヘルスケア」部門が思った以上に伸びたのが主な要因です。当社は電子材料を扱う「マテリアルズ」や複合機など事務機器の「ビジネスイノベーション」、写真関連の「イメージング」といった4つの部門があります。そのうちヘルスケア部門が売上高、利益ともに最も大きくなったのは初めてです。
ヘルスケアの中で特に好調なのはどんな事業でしょうか。
製薬会社からの委託でバイオ医薬品を開発、生産する「バイオCDMO」ですね。画像診断機器や創薬支援ビジネスも成長しているのですが、ここ数年は特にバイオCDMOの伸びが著しいです。
創薬メーカーやバイオベンチャーにとって、医薬品の製造設備や生産工程を持ち続けるのは得策ではないでしょう。開発中の医薬品が成功する保証はありません。ならば餅は餅屋に任せようと考えて、CDMOを検討する企業が増えています。
医療用医薬品の市場規模は世界で140兆円程度といわれています。そのうち7割が低分子医薬で、残りがバイオ医薬ですね。バイオ医薬はがんなどの難病に効果があったり、副作用を抑えられたりといったメリットがあります。一方でバイオ医薬のCDMOの利用率は2割程度と、低分子医薬の4割と比べて低い。今後、確実に成長するとみています。
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