社長兼CEO(最高経営責任者)を務めた9年間でリクルートの変革を主導。米求人検索サイトのインディード買収を決断し、リクルートをグローバル企業へと変貌させた。成功の秘訣は「アジェンダセッティング(課題設定)」にあると説く。

(聞き手は 本誌編集長 磯貝 高行)

PROFILE

峰岸真澄[みねぎし・ますみ] 氏
1964年生まれ。87年立教大学経済学部卒業後、リクルート(現リクルートホールディングス)入社。自動車情報誌「カーセンサー」の広告事業を経て結婚情報誌「ゼクシィ」創刊に携わる。2003年執行役員、04年常務執行役員、09年取締役兼常務執行役員、11年取締役兼専務執行役員を経て、12年4月に社長兼CEO(最高経営責任者)。21年4月から会長兼取締役会議長。22年6月にANAホールディングスとコニカミノルタの社外取締役に就任予定。(写真=北山 宏一)

長引く新型コロナウイルス禍に加え、ロシアによるウクライナ侵攻で国際情勢は激変しています。人材ビジネスへの影響はありますか。

 2020年4月に米国の失業率は15%近くに高まりました。ほぼ完全雇用状態から一気に悪化したのです。それが今年3月には4%程度と、ほぼ完全雇用状態に戻りました。コロナ禍の2年間は米国経済の基礎力と回復力の強さが際立ったと感じます。

 ただ、米国の雇用情勢はある意味で不透明になっています。コロナ禍を機にシニアを中心に大量の早期退職が発生しました。その後、雇用が一気に回復して「売り手市場」となり、報酬がどこまで上がるか様子見をしている人も多い。現状では景気回復による急激なインフレ抑制へ、利上げ施策を進める中で景気後退の可能性が高まっているといわれています。ウクライナ危機も直撃し、不透明感がさらに増しています。

峰岸さんが社長兼CEO(最高経営責任者)在任中に、ゼロに近かった海外売上高比率が5割程度に高まるなど、リクルートホールディングスは全く違う会社になりました。

 就任前の10年ごろに着目していたのは大きく2つの点です。一つはスマートデバイス、クラウド、ビッグデータ、AI(人工知能)という4つの技術トレンド。もう一つは、検索エンジンやEC(電子商取引)を手掛けるインターネットの巨人たちが、求人や住宅、旅行などの領域で日本参入をうかがっていたことです。

海外で成功しないと負ける

 当時の我々は、海外売上高比率が4%弱。国内は安泰でも、グローバルプレーヤーの技術革新で厳しい状況に立たされるかもしれない。グローバルに出て成功しない限りは負けてしまうと感じていました。

成算はあったのですか。

 前向きに出ていくことで、自社のサービスがよくなるイメージを持っていました。海外進出に当たっては「勝ち筋」と「自前主義かどうか」の2つを考える必要がありました。

 勝ち筋は、強みがあるかどうかですので、祖業である人材ビジネスを客観評価しました。その結果、インターネットビジネスであっても人材分野であれば、マネタイズ(収益化)する能力はあると結論付けました。

 後は、自前でいくのか、いかないのか。00年代に中国で自前での海外展開を進めましたが、うまくいきませんでした。その経験から日本での勝ちパターンを持っていくのは厳しいと感じていました。

 海外に行くなら海外でやっている人が経営を執行するのが一番いいだろうし、革新的な技術を生かした新しいビジネスモデルを人材領域で手掛けている人たちを取り込みながら攻めよう、と。こうした議論の末、買収によって海外の人材マッチング市場に出ると決めたわけです。