自らデザインし途上国で人権への配慮のもと生産されるバッグは、他にない価値をまとう。今や競合相手から商品をコピーされるまでに成長した。「途上国から世界に通用するバッグを」。起業時の誓いは輝きを増す。

(聞き手は 本誌編集長 磯貝 高行)

(写真=菊池 くらげ)
(写真=菊池 くらげ)
PROFILE

山口絵理子[やまぐち・えりこ]氏
1981年生まれ。慶応義塾大学を卒業した後、米ワシントンの国際機関でのインターンを経てバングラデシュのBRAC大学院開発学部修士課程修了。2006年、24歳でマザーハウスを設立した。現在、バングラのほかスリランカやミャンマーなど途上国6カ国の自社工場、提携工房でジュート(黄麻)やレザーのバッグなどの生産を手掛ける。チーフデザイナーも兼任。埼玉県出身。

新型コロナウイルス禍で足元の経営状況はどうなっているのでしょう。

 2021年12月期は06年の創業来、初めての営業赤字になりました。それまではずっと増収増益でしたが、生産地のバングラデシュなどがロックダウン(都市封鎖)したほか、百貨店などに入る国内40の店舗も客足が遠のきました。しかし、足元では回復してきていて、21年12月は単月としても過去最高益だったんです。リピーターの方にすごく支えられていますね。

 オンラインでの販売にも力を入れました。職人さんがバッグを作る実演動画を配信したり、フランスのショールームをオープンしたときは現地中継もしたりといろいろ、ファンづくりにも取り組みました。

 コロナ前、生産地である6カ国には年間通して7割ほど居住し働いていたのですが、今はこちらで試作した商品を送って現地でも作れるか確認して、というやり取りを8、9回ほど繰り返して開発しています。

早く現地に行きたいのでは。

 うずうずしていましたが、4月中に渡航する予定です。現在、新工場を建設する計画があります。すでに土地は取得し基礎工事は終わっているのですが、会社として過去にない規模の投資になります。日本の建築家を呼んで外観も内装もデザインしてもらい、従業員に喜んでもらえる夢のある工場にするんですよ。バングラは糖尿病になる人が多いのですが、健康増進のためのジムやウオーキングできる通路を工場内に作ります。ガーデニングもできるようにするんですよ。

次ページ 生産者の「ハピネス」を考える