プリンスホテルなど所有資産を約1500億円で投資ファンドに売却する。所有と運営を切り離し、経営を安定させるための決断だった。危機にどう向き合い、脱するのか。心構えと戦略を聞いた。
(聞き手は 本誌編集長 磯貝 高行)

後藤高志[ごとう・たかし]氏
1949年生まれ。72年、東京大学経済学部を卒業し旧第一勧業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)に入行。97年ごろ、総会屋利益供与事件で混乱した行内で真相解明に尽力した改革派「4人組」の一人。その後みずほコーポレート銀行副頭取などを歴任。2005年から有価証券報告書虚偽記載事件で上場廃止となった旧西武鉄道に転じて社長就任、再建に携わる。中学から社会人までラガーマンとして活躍した。
プリンスホテルやスキー場など31物件、総額1500億円の売却を決めました。2005年からの経営再建の過程で優良な資産だけを残してきたのに、なぜ売るのでしょうか。
新型コロナウイルス禍が発生する前は、資産の所有と運営を一体にしたビジネスモデルが非常にうまくいっていました。ところが今回のコロナ禍で、需要が瞬間蒸発した。東京都内の旗艦ホテルの稼働率は常時90%近かったが、数%になってしまった。その結果、プリンスホテルが非常に大きな赤字を出し、資産を持つことによるリスクがはっきりと見えてきました。

そこで所有と運営を切り離し、運営受託に特化することにしたわけです。もちろん資産を保有するメリットもあります。しかし平時はいいが、今回のようなパンデミックでは弱みになる。このリスクを切り離し、経営を安定させると決めました。
私は、今回は単純な資産売却ではなく「流動化」と言っています。事業所を売却してもプリンスホテルブランドで運営を受託するので、プリンスホテルの名前も変わらないし、従業員の雇用も守ります。ビジネスモデルの転換だということです。
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