創業者が夢見た「売上高10兆円」のゴールに向かう経営のボールを受け取って4年。住宅メーカーの枠を超え、物流センターなども手掛ける複合企業の色合いを濃くしてきた。「事業は人なり」と、次世代を担う人材の育成に注力する。

(聞き手は 本誌編集長 磯貝 高行)

(写真=太田 未来子)
(写真=太田 未来子)
PROFILE

芳井敬一[よしい・けいいち]氏
大和ハウス工業社長兼CEO(最高経営責任者)
1958年生まれ。81年に中央大学文学部を卒業し、神戸製鋼グループの神鋼海運(現・神鋼物流)入社。ラグビー選手と仕事の両立に取り組む。90年に大和ハウス工業入社。姫路支店長や金沢支店長を経験し、2011年から取締役。常務執行役員、専務執行役員を経て、17年に社長就任。19年からCEO(最高経営責任者)を兼ねる。大学卒業後は小学校教員になる夢を持っていたが、社会人ラグビーを続けたことで企業との縁が今日まで続いている。

鉄や石炭、木材など資源・資材の価格が上がっています。事業への影響はどうでしょうか。

 影響は必ず出ます。日本製鉄など幾つかの素材メーカーと値上げ交渉をしていますし、実際に値上げに応じたり、もう少し延ばしてくれとお願いしたりしています。木材もそうですね。約3倍の価格で止まってしまった。石炭や石油の価格も上昇していますから、私たちも製品に反映せざるを得なくなります。

 今の住宅やアパート建設の受注残は、もともと原価を高く想定していたのですが、そこからさらに上振れする可能性が高い。利益率が低下してしまう懸念があります。

値上げで対応していくのですか。

 そうですね。例えば、アパートを建てるオーナーは今までより高い施工費が必要になります。そうすると増額分が家賃に上乗せされ、入居者は高い金額で借りなければならない。こうしたインフレが起こりますよね。

 給料が一定ならば可処分所得が減るので賃上げの議論になる。既に話題になっていますが、値上げによってこうした対応をせざるを得なくなるのではないでしょうか。

日本はずっとデフレ基調でした。今の値上げの動きはしばらく続くとお考えですか。

 変化がやや急激ではありますが、素材価格もインフレの傾向が見られます。一部の分野だけじゃないかという話もありますが、もしそれで消費者物価指数(CPI)が上昇するならば、それに応じた賃上げをしていかなければ活力は生み出せないでしょう。

 ただ、それを価格に転嫁するのは簡単ではないかもしれません。社会がデフレに慣れているので。

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