新型コロナウイルス禍によって2021年3月期における国内最大の最終赤字を計上した。固定費の大きな会社を柔軟に経営する知恵が求められている。日本経済の動脈をどう支えるか。処方箋を聞く。
(聞き手は 本誌編集長 磯貝 高行)

深澤 祐二[ふかさわ・ゆうじ]氏
1954年北海道生まれ。78年東京大学法学部卒、日本国有鉄道に入社。87年の分割民営化でJR東日本人事部に配属。人事、総務、財務畑を歩み、2003年に総合企画本部投資計画部長、06年に取締役人事部長に就任。常務取締役、副社長を経て18年4月から現職。父親が青函連絡船で働き、親子2代で国鉄マンの道を選んだ。16年に副社長として故郷の新函館北斗駅で行われた北海道新幹線の開業式典に臨んだ。
新型コロナウイルス禍の影響で2021年3月期は5779億円の最終赤字でした。
20年度では日本一の赤字会社になってしまいました。まさに会社発足以来の危機です。リーマン・ショックの時も、東日本大震災の時も、同じように利用者が減りましたが、その後は回復しました。今までの危機はある程度先が見通せたのですが、コロナは先が見えません。
テレワークなど働き方が変わりましたし、eコマースも増えています。我々は、元には戻らないと覚悟しています。だから最近、ポストコロナとかアフターコロナという言葉は使わないようにしているのです。
何と言っているのですか。
ウィズコロナですね。ウィズの中で、どうやって我々は生き延びていくのかというのを考えなければいけません。
鉄道事業の営業利益率はこれまで十数%ありました。利用客が8割になると赤字になってしまいます。鉄道事業は固定費の比率が高いので、そこをどう柔軟にしていけるかが重要です。サービスの基本と言っている、ダイヤと運賃を見直していこうと思っています。
サービスの基本を見直す
一つは終電時刻の繰り上げで、3月に実施しました。打ち出した当時は夜のメンテナンス作業をずいぶん取材していただき、夜中こんなことをやっているんだと理解いただいたというのはよかったなと思うんです。よく映像が出たのは、昭和40年代ぐらいでしょうか。50~60年前の映像ですけど、(終電の)ダイヤはあのころと変わってないですよ。運賃も変わってない。仕組み自体はね。
そこをやっぱり変えていかなければいけないと思います。次のステップでやりたいと思っているのはピークシフト。朝のラッシュや、正月、ゴールデンウイーク、お盆。これらをできるだけずらしていただけるような施策をやっていきたい。すでに3月から、ラッシュ時間帯の前後に通勤定期券で利用するとポイントを付与するサービスを始めています。
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