アナウンサーから転身し、「働く女性の支援」をテーマに保育サービスを提供して30年超。2020年末には国連のSDGsに沿った企業として東証1部上場を果たした。女性の社会進出を支えてきた起業家はその現状をどう見るか。
(聞き手は 本誌編集長 磯貝 高行)

中村 紀子[なかむら・のりこ]氏
1973年、日本教育テレビ(現・テレビ朝日)にアナウンサーとして入社。76年に退職後、フリーランスに。男女雇用機会均等法が制定された85年には女性管理職の自己啓発の場として日本女性エグゼクティブ協会(JAFE)を設立。87年にベビーシッターサービスを手掛けるジャフィサービス(現・ポピンズ)を設立し、社長に。2000年の株式会社による保育所設置の解禁後は保育所運営にも注力。16年には持ち株会社のポピンズホールディングス(HD)を設立して社長に。18年にはポピンズとポピンズHDの社長の座を娘の轟麻衣子氏に譲り、自身は会長に就任した。現在は東京と長野・軽井沢の別宅の2拠点で職務に取り組んでいる。
2020年末の上場はSDGs(持続可能な開発目標)に沿った事業を資金使途とする「SDGs-IPO」として国内初の事例でした。
これまでも、上場を検討した時期は2~3度ありましたが、見送ってきました。働く女性の支援など、社会課題を解決するという経営方針が、日本の世の中で重きを置いて見てもらえていなかったからです。
ところが、15年に国連がSDGsを発表すると、風向きが変わりました。私たちの経営方針がSDGsの項目にぴたりと合ったわけです。
私たちの事業がサステナブルな地球を作っていくために必要だと、人々が振り向いてくれるようになった。「時代が追いついてきた」と思い、公の舞台で使命を果たそうと決断しました。
日本の課題だった保育の受け皿不足は今、解消傾向にあります。業界ではどんな変化が起きていますか。
コロナ禍が影響して待機児童が減っている、という見方はできるでしょう。20年の出生数は約84万人と過去最低でした。21年は80万人を切りそうです。団塊世代は年260万人ですからね。
育児休暇を延長する親が増えているほか、テレワークの普及で(保育所の需給に余裕がある)地方に引っ越す人も多い。パートの母親が認可保育所に入れられる基準となる労働時間を保てなくなり、保育所を退園させる動きもあります。
一方、コロナ禍が一定程度収束すれば、保育需要は高まっていく。来年の4月に入園させようと思っていた親が預け先を確保しようと倍率の低い今のうちに子どもを入園させるという動きもあります。
Powered by リゾーム?