日本在住20年超の知日派研究者は、これまでに日本企業6社の社外取締役を務めてきた。日本の変化の遅さをしった激励しつつ、今日の企業が抱える課題に率直に切り込む。「おじさん経営」を改めることが再成長に欠かせないと説いた。
(聞き手は 本誌編集長 磯貝 高行)

クリスティーナ ・アメージャン[Christina L. Ahmadjian]氏
1959年生まれ。81年米ハーバード大学卒業。『ジャパン・アズ・ナンバーワン』を著したエズラ・ヴォーゲル氏の勧めで来日し、82年から三菱電機で勤務。87年米スタンフォード大学経営大学院でMBA(経営学修士号)、95年米カリフォルニア大学バークレー校でPh.D.(博士号)を取得。95年米コロンビア大学経営大学院助教授に就任。2004年一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授。18年から同大学院経営管理研究科教授。専門研究テーマは、比較コーポレート・ガバナンスや資本主義システム、日本のビジネスおよび経営。現在、日本取引所グループ、住友電気工業、アサヒグループホールディングス、NECの社外取締役を務める。日本在住20年超。
コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)が6月に改定され、2022年4月に創設するプライム市場では取締役の3分の1以上を社外取締役にするなどの基準が求められます。日本取引所グループなど4社で社外取を務める立場から、どう評価していますか。
もちろんいいことだと思います。ルールがないと日本の企業はなかなか動きませんから。
日本企業のガバナンスは数値目標を追いがちです。女性の登用人数やESG(環境・社会・ガバナンス)、取締役の知識や経験を一覧にしたスキル・マトリックスに一生懸命取り組んでいる。それは大事なのですが、表面的な取り組みになりがちです。
外形的に「弁護士1人」「女性も必要」という感覚の企業もあるのでは。
建前ではなく、「会社にとって何が重要で、どのような人材が必要か」という議論が欠かせない。しかし、そうしていない日本企業が少なくない。
現在の東証1部企業が該当するプライム市場への上場は、流通株式比率などの要件も厳しくなります。
これも非常にいいことです。海外投資家の間では東証はルールが緩いのではないかとの見方が多かった。プライム市場のレベルやルールを世界水準に引き上げ、その次に位置付けるスタンダード市場などに上場する企業が追従するのだと思います。
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