「丸の内の大家」が東京駅周辺で手掛ける再開発1号ビルが完成し、街の輪郭が見え始めた。エンターテインメントに力を入れ、五輪後の東京を世界に発信すると意気込む。株価ディスカウントは気がかりだが、やらねばならぬ責務があると説く。
(聞き手は 本誌編集長 磯貝 高行)

吉田淳一[よしだ・じゅんいち]氏
三菱地所社長
1958年、福岡県生まれ。82年東京大学法学部卒業、三菱地所入社。住宅事業やビル事業などを幅広く担当したほか、人事部や総務部の担当役員としてコンプライアンスやリスクマネジメントなどの管理分野を経験した。2012年執行役員、14年常務執行役員、16年取締役兼執行役常務。17年4月に58歳で新社長に就任した際は「11人抜きの昇格」と話題になった。
コロナ禍は不動産業界にどのようなインパクトを与えていますか。
我々が取り組む不動産事業では、新しい価値を生み出していくような時間の過ごし方や空間づくりが大事だ、とコロナ前から言われ始めていました。デジタルトランスフォーメーションやオープンイノベーション、あるいは働き方改革を進める環境を整えるということです。その傾向が少しずつ進んでいたのですが、コロナ禍でかなりスピードアップしたと言えます。
育児や介護があり、定刻に出社するのが難しいけれども働きたい人にとって、リモートワークは効果が出ている。営業に出てリモートで報告をし、そのまま帰宅するケースも増えているはずです。効率の良い時間の使い方が広がっている。
住宅は高価な買い物なので対面の営業が難しくなるとスピードダウンするのかなと予想していたのですが、必ずしもそうではなかった。都心のプレミアムの物件は引き続き引き合いがあり、逆に自然環境が豊かな郊外でショッピングセンターやコミュニティー施設、子供の学習機能が整っているような大規模なマンションは、以前よりも人気がある。人々の意思決定や行動パターンが変わっていると感じています。
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