「脱炭素」の実現に欠かせない液体水素の供給網づくりで主導的な役割を果たすと宣言した。航空・鉄道・ロボットなど幅広い事業を手掛けることの相乗効果を生み出すべく腐心する。新規事業に挑み続けた経験を会社全体の変革に昇華させる。

(聞き手は 本誌編集長 磯貝 高行)

(写真=竹井 俊晴)
(写真=竹井 俊晴)
PROFILE

橋本 康彦[はしもと・やすひこ]氏
川崎重工業社長
1957年神戸市生まれ。81年に東京大学工学部を卒業し、川崎重工業に入社。ロボット開発に長年従事し、半導体ウエハー搬送用ロボット事業の立ち上げや医療ロボット開発会社「メディカロイド」の立ち上げなどを担う。2018年に取締役常務執行役員(精密機械・ロボットカンパニープレジデント)。20年6月から現職。最高経営責任者(CEO)を務める。週末にはギターを弾いたり絵を描いたりして気分転換を図る。

水素関連事業の売上高を2031年3月期に3000億円規模にする目標を6月に打ち出しました。半年前の1200億円から一気に2.5倍に引き上げましたが、どのような決断だったのでしょうか。

 我々が今目指している姿に世界が変わろうしたときに、最低でも3000億円を超える規模にならざるを得ないと考えたんです。そのぐらいまで頑張らないと、とても今の世の中のニーズは満たせないだろうと。

 前の計画を公表したのは、政府が50年の「カーボンニュートラル」に向けた方針を示したのとほぼ同じ時期でした。それ以来、温暖化ガス排出量の削減目標のタイミングやパーセンテージがどんどん引き上げられてきた。

 もともとは液化水素運搬用の大型船が2隻あればカバーできるとみていたのですが、今の状況からすると最低でも3隻なければ絶対に足りない。水素供給網の構築に向けた2000億円を超える規模の国家プロジェクトの募集も始まっています。

 さらに、米国や欧州など海外の国々も計画を一気に具体化させていて、「一緒にやりましょう」と声をかけてもらっています。例えばオーストラリアの鉄鉱石大手、フォーテスキュー・メタルズ・グループとは、液化水素サプライチェーン(供給網)の事業化に向けた検討を始めました。ほかにも色々なところとディスカッションしています。

 こうしたことを積み重ねると、とても1200億円という規模では収まらない。それで目標を見直したわけです。

なぜ世界中から川崎重工に声がかかるのでしょうか。

 水素のサプライチェーンの根幹部分で、川崎重工しかできないものが非常に多いんです。特に大型の液化設備や大型の液化運搬船です。水素の値段を下げるには大型の設備がなければ無理だというのが世界中で共通の認識。その大型化という点で我々は大きなアドバンテージを持っています。

 かつて排ガス規制の議論が持ち上がったときに「将来はLNG(液化天然ガス)だ」と言われました。ただ、その時点では価格が高くて難しいとの見方が強かった。そのLNGタンクの大型化に日本で初めて取り組んで供給したのが川崎重工です。その結果、世界中でLNGタンカーが行き交うようになって価格が下がり、普通に使えるようになったのです。それを今度は水素でやろうというわけです。

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