国内の鉄鋼メーカーの中でいち早く「カーボンニュートラル」に向けた目標を打ち出した。中国メーカーが規模拡大で影響力を強め、欧州大手が資金力でリードする鉄鋼業界。国内市場の縮小が続く中、難題をどう解いていくのか。

(聞き手は 本誌編集長 磯貝 高行)

(写真=加藤 康)
(写真=加藤 康)
PROFILE

柿木 厚司[かきぎ・こうじ]氏
JFEホールディングス社長
1977年に東京大学経済学部を卒業し、川崎製鉄に入社。人事畑が長く川崎製鉄と日本鋼管(NKK)の経営統合でJFEグループを創設した際は統合作業の人事分野で中核を担った。冷静沈着な判断力には定評がある。2007年JFEスチール常務執行役員、15年社長。19年4月からJFEホールディングス社長。茨城県出身。

世界的に気候変動への危機意識が高まり、脱炭素への取り組みが加速しています。JFEホールディングス(HD)にとってピンチとチャンスのどちらでしょうか。

 世界全体を見ると、脱炭素化の加速は恐らく止まらないでしょう。金融を含めてあらゆる分野で脱炭素が求められています。その中で、製造業の中でも多くの炭素を排出しているであろう我々にとって避けて通れない道だと思います。日本鉄鋼連盟は温暖化ガス排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を2100年に実現するとしていましたが、2021年2月に目標年を50年とし、50年も前倒ししました。

 会社単位で目標を明確にすることも求められています。国内の鉄鋼業は従来、鉄鋼連盟ベースの目標しか出していませんでしたが、欧州の鉄鋼メーカーが先んじて会社単位での二酸化炭素(CO2)削減目標を出すようになってきました。そこでJFEHDは20年、業界の中でいち早く30年と50年の目標を出しました。

 日本の鉄鋼市場はどんどん縮まっています。しかし、脱炭素に向けた技術革新への道筋がつけば、その技術をソリューションとして売る機会も出てくるでしょう。そうした意味ではピンチでもあり、チャンスでもあります。

鉄鋼連盟がカーボンニュートラルの目標を半世紀も早めてハードルが高くなりましたが、実現可能なのでしょうか。

 実現するような企業が残るということなのでしょうね。

 問題の一つは、CO2の排出を実質ゼロにすることが鉄そのものの価値を高めるわけではないことです。その意味では、関連投資をせずにある期間までは収益だけ追いかけてもいいわけです。

 しかし、そうした会社は恐らく50年には残れません。収益を上げながらカーボンニュートラルに向けて投資を続ける会社が残るのでしょう。

続きを読む 2/4 革新的な技術開発もキーに

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