積極的な企業買収により、自動車部品など新たな収益源の育成が実を結びつつある。炭素繊維やヘルスケアなど多様な事業を抱え、かつての繊維会社のイメージはない。脱炭素の潮流を「プラス」と言い切る同社の目指す先とは。
(聞き手は 本誌編集長 磯貝 高行)

鈴木 純[すずき・じゅん]氏
1958年生まれ。81年東京大学理学部卒業、83年東大大学院理学系研究科修了、帝人入社。94年から3年間、英国にある帝人MRC研究所で勤務。2012年4月執行役員、13年6月、取締役常務執行役員。14年4月から現職。今はサッカーをすることは減ったが、スペインのFCバルセロナのファン。東京都出身。
2014年の就任から8年目に入りました。これまでの成果をどう捉えていますか。
前半の4年間は構造改革がメインでした。これは想定通りだし、みんな本当に頑張ってくれて結果も出た。16年くらいから、10年後といったもっと先を見た経営計画の話を始めました。
事業とはマーケットとの対話の中で成長していくものです。その意味では、本当の成長はまだこれからだと思っています。炭素繊維の中間材や複合成形材料などを将来の収益源として育成する「ストラテジックフォーカス」に決め、ポートフォリオの中身を変えようとしているところですが、生みの苦しみの段階ですね。
現在の中期経営計画の段階で、新しい領域をものすごく伸ばせるわけではありませんが、25年や30年にしっかり伸ばしていくために「成長基盤を確立する」と言っています。新型コロナウイルスの感染拡大の影響は出ているものの、事業の基盤づくりの面では頑張ってできていると思います。
17年に米国の自動車部品メーカー、コンチネンタル・ストラクチュラル・プラスチックス(CSP)を買収しました。成果はいかがですか。
売上高は予想通りに順調に推移しています。23年や24年に発売される新車向けの受注が4つ獲得できていて、高収益のものも多くあります。(米ゼネラル・モーターズなどの)ビッグ3もあれば、18年に買収したポルトガルの自動車部品加工のイナパルを通じ欧州メーカーにも食い込みました。完全に1次サプライヤーにあたる「ティア1」の状態ですね。
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