社長自ら推進室長を兼務し、DX(デジタルトランスフォーメーション)の陣頭指揮を執る。たった1週間で連結70社の決算データのとりまとめを実現するなど、成果が表れてきた。人任せにせず、自前で改革を進めることこそ肝要と説く。

(聞き手は 本誌編集長 磯貝 高行)

(写真=松隈 直樹)
PROFILE

小笠原 浩[おがさわら・ひろし]氏
1955年愛媛県生まれ。 1979年に九州工業大学情報工学科を卒業し、安川電機に入社。システム系に強みを発揮しながら、一貫して技術畑を歩む。2006年取締役・モーションコントロール事業部副事業部長。14年取締役・常務執行役員・技術開発本部長。16年代表取締役社長。18年からICT戦略推進室長を兼務。

2018年に社長自身がICT戦略推進室長に就き、全社的なDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しています。安川電機がめざすDXとは何でしょう。

 一言で表すのはなかなか難しいところがありますが、シンプルに言えば、データの見える化です。社内の各部門や各事業所、海外の現地法人などをIT(情報技術)でつないで、全世界的にリアルタイムで経営状況が見られるようにする。

 DXについては具体的な目標を2段階で定めています。まずは「1週間で決算データをまとめられるようにする」、次の段階では「転勤しても着任したその日から仕事ができるようにする」ことを目指して取り組んできました。

進捗はいかがでしょうか。

 約70社ある連結決算の対象の間で、500近くにも上る勘定科目の定義やコードを統一したことで、20年下期に連結の四半期決算のデータを1週間、土日を除けば実質5日間で確定することができました。グループ全体で月200万件ある受注を日々リアルタイムで把握して、短期間に決算としてまとめられるようになったわけです。

 次なる目標の達成に向けて、加速させているのが業務の標準化です。業務については、目的が同じにもかかわらず、部門や事業所によって進め方の手順や内容が少しずつ異なるといったことが多々あります。

 こうした業務をグループ内で同じコードを基に標準化できれば、異動しても業務のやり方の違いに戸惑うことなく、引き継ぎなしで初日から仕事できるようになります。これはコツコツと進めています。

 DX全体としては、ようやく5合目ぐらいまで来ることができたという感じでしょうか。

2年間は直接手出しを我慢

なぜ社長自らがDXの旗振り役になる必要があるのですか。

言うことを聞かなければクビにできるからDXが進む。北九州から離れる理由がないし、そうした発想もない。(写真=松隈 直樹)

 以前からDXには関わっていましたが、実は社長に就任してから2年間は直接手出しするのを我慢していました。それでも私が手がけることにしたのは、そうしないと進まないからです。社長自身が手がけると、どうしてDXが進むのか。極論すれば、言うことを聞かない社員をクビにできるからですよ。

人事権とセットでなければ、DXは推進できないということですか。

 DXを進めるに当たっては、先に業務の進め方をそろえなければなりません。こういった改革は、本来は社長の仕事ですよね。人事権がない担当者が取り組むとどうなるか。おかしな業務をそのままにしてIT化しようとして失敗する。標準化がなければ、IT化はできません。

 これは実現するまでに10年かかりましたが、業務を標準化するために約2500人いる社員全員に日報をつけてもらっています。

続きを読む 2/3 カネ余りで受注は好調

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