2021年はコロナ禍からの回復を期待する声が上がるが、伊藤忠商事の岡藤正広会長CEO(最高経営責任者)は「予想は無意味」と言い切る。苦しんだ競合他社を圧倒し、利益で業界トップに立とうとしているが慢心はない。多少の環境変化には揺るがない「低重心」経営で楽観論を戒める。
(聞き手は 本誌編集長 東 昌樹)

岡藤正広[おかふじ・まさひろ]氏
1949年12月、大阪府生まれ。74年に東京大学経済学部を卒業して、伊藤忠商事に入社。繊維部門が長く、伊藤忠の中核事業に育てた。2006年専務取締役、09年取締役副社長を経て、10年に社長。18年4月から取締役会長CEO(最高経営責任者)。期初に掲げた利益目標に必達する「コミットメント経営」を実践し、最終利益を就任前の3倍以上に引き上げた。21年3月期の最終利益は4000億円を計画し、業界首位に立つ見込み。
2020年は大変な1年でした。21年はどのような年になると思われますか。
20年は、先の予想が全く無意味だと体感した年でした。リスクだけをシビアに見て、最悪に備える。悲観的にものを見ることが大事だと思います。
リスクの一つが金融市場のバブル崩壊です。米国では「箱」としての会社(特別買収目的会社、SPAC)だけで上場し、投資家からお金を集める手法が広まっています。異常ですよね。新型コロナウイルスのワクチンへの期待で株価は上がっていますが、あふれたお金が生むバブルはいずれはじけます。米中対立より身近な問題で必ず起きるという気がします。21年に起きなくても、次の年には起きるかもしれません。
もう一つは、やはり米中対立の行方です。米大統領が交代することになり、中国は少し強気に出ている。習近平(シー・ジンピン)国家主席の任期は従来の規定であれば23年までですが、それ以降も国家主席を務めることを見据えて、いろいろ攻勢に出てくるでしょう。
新型コロナの感染状況がどうなるか、米国の新大統領になるバイデン氏の政策はどのようなものか、そして中国経済の本格的な回復が継続するか。この3つの潮流を押さえ、日本はどう対応するか考えないといけません。
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