今まで会社にぼったくられていると思っていたが、そうではないと。

 ギャラの水準が低いことは衝撃だったと思います。俺たちのギャラ、実力ってこれだけなんだと。

 でも私もがくぜんとしたんです。騒動の後、あるコンビと食事をした際に、あるテレビ番組のギャラが「1人2万5000円なんです。頑張っているのでもう少し上げてもらえませんか」と言われました。

 私も彼らの実力からすると安すぎると思い調べてみたら、会社の取り分が5万円で、残り5万円を2人で分けていて間違いじゃなかった。最近は個々のタレントのギャラがいくらか見ていなかったので驚きました。かつてなら3倍はあったと思います。

もはやテレビ“にも”出る時代

テレビの存在感低下とともに、ギャラも下がっているんですね。そこにコロナの追い打ちもありました。

 当社としては劇場が根幹だと改めて気づかされました。テレビの収録が一時できなくなり、自社で運営する劇場の役割を見つめ直したんです。

<span class="fontBold">あの時の謝罪会見は大混乱、会社も疑心暗鬼だった。唯一不変のものは劇場。タレントの出演先は変わる。</span>(写真=的野 弘路)
あの時の謝罪会見は大混乱、会社も疑心暗鬼だった。唯一不変のものは劇場。タレントの出演先は変わる。(写真=的野 弘路)

 当社の108年の歴史で、唯一不変のものが劇場の運営とタレントのマネジメント。やっぱりこれが基本だと。ラジオ、映画、テレビ、ユーチューブやツイッター、アマゾン、ネットフリックスなど時代に即して様々な出演先はありますが、タレントを生むのは劇場なんです。

 でも、その劇場も3月にすべて閉じました。戦時中でも開けていたそうなので閉じるのは史上初です。仮に12月まで劇場を再開できなかったらどうなるか、予算のシミュレーションをしたら、どえらいインパクトでした。

 そんなときに、現場がデジタルで何かできないかと一生懸命考えてくれて、おのおのが家から配信する自宅劇場を4月に立ち上げ、その次は無観客でも劇場から配信しようと動きました。

ユーチューブにもかなり力を入れていますね。

 13年からマルチチャンネルネットワーク(MCN)の「OmO(オモ)」を始めました。実はそれ以前にも、グーグルとは公式チャンネルなどでお付き合いをしており、その流れでMCNは吉本にとっても良い仕組みなので許可をとりました。

 普通のプロダクションがやろうとすると所属タレント個人の口座になりますが、我々は何千人もいるタレントがOmOの中でバンバン自分たちの名前でチャンネルを展開できます。

先駆けはカジサックでしょうか。

 彼は18年に始めたのですが、すごいところはユーチューブに1週間の4~5日を費やすと決めたことです。彼はテレビの仕事を整理して時間と労力をつぎ込んだ。何人が見てくれるかまだ分からないときにユーチューブにかけた。

吉本興業としてもバックアップしたんでしょうか。

 しました。まず1年間は赤字でもいいと、制作費とカジサックへのギャラは持ち出しです。本気でやるなら会社も突っ込もうと。

 でも再生数が増えて損益分岐点を超えて今は会社2割、制作費が2割、タレントが6割といった配分です。彼には、チャンネル登録者数が100万人を突破しなかったら芸人を引退する、という覚悟がありましたから。リスクを取ったから今のリターンがある。

次ページ 地域とアジアとデジタルを融合