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コロナ禍で業績をむしばまれ、日本各地の中小企業が苦境に立たされている。片や賃上げや生産性をものさしに、もっと中小の淘汰・再編を加速すべしとの意見は根強い。こうした考えに真っ向反論、「その前にやるべきことがある」と説く。

(聞き手は 本誌編集長 東 昌樹)

目下、コロナ禍第3波の様相です。日本経済をもう一度立ち直らせることはできるのでしょうか。

 コロナ禍で負った傷は、中国に比べれば深いが、先進国の中では相対的には浅い。さて、どういった形で今後立ち上がっていくのか。将来への踏み台になることは間違いないでしょう。二律背反的な感染防止と経済活動の両立をどうマネジメントしていくのか。コロナで将来への不安はさらに増しており、人々の「心の中にある自制・自粛」の意識が解けていくのにも、相当な時間がかかると思っています。

菅義偉政権になって新設された成長戦略会議のメンバーにも入っていますね。中長期的にこの国を強くしていくどんなビジョンをお持ちですか。

 冷静に考えると、日本の個人消費の低迷はコロナ前から起きていました。賃金が上がっても消費は増えない。貯蓄性向は上がる。なぜか。僕の仮説はやっぱり将来不安ではなかろうかと。将来、年金を十分にもらえないのではないか、病気になった場合にはどうすればいいのか。不安だからみんな若いうちから貯蓄に走るわけです。

 それにいつまでたっても、年金改革あるいは社会保障と税の一体改革は不十分なまま先延ばしになってきた。今は政府にはコロナ対策に万全を期してほしいけれども、克服した暁には将来を見据えた骨太の制度改革に取り組んでほしい。切なる願いですね。

(写真=竹井 俊晴)
PROFILE

三村 明夫[みむら・あきお]氏
1940年群馬県生まれ。63年東京大学経済学部卒、富士製鉄(現日本製鉄)入社。新日本製鉄(同)で2003年社長、08年会長。現日本製鉄名誉会長。東芝相談役だった岡村正氏の後任で13年11月から日本商工会議所会頭に就任、東京商工会議所の会頭も兼ねる。2期6年の任期を終え、19年11月から異例とされる3期目に入った。政府系会議の役職のほか、東京海上ホールディングス、日本郵政、INCJ(旧産業革新機構)の社外取締役も務めている。

日経ビジネス2020年12月14日号 58~61ページより目次