新型コロナウイルスにより、観光客が一時ほぼゼロになるほどの打撃を被った。逆風は今も続く。だが危機を通じ、インバウンド頼みだった過去を振り返る機会を得た。デジタル技術を融合させ、旅のあり方を見直す取り組みが始まった。
(聞き手は 本誌編集長 東 昌樹)

山北 栄二郎[やまきた・えいじろう]氏
1987年早稲田大学第一文学部卒業、日本交通公社(現JTB)入社。2007年以降、ハンガリーやデンマーク、オランダ、スイスの子会社などで役員や経営トップを務め、JTBの海外戦略を推進した。15年JTB執行役員、17年欧州代表、20年1月常務執行役員。旅行業界がコロナ禍の直撃を受けている6月に社長執行役員に就任した。
コロナウイルスで一時ほぼゼロにまで落ち込んだ観光業は、どの程度まで客足が戻ってきているのでしょうか。
海外旅行の状況は変わっていません。3月にストップし、インバウンド(訪日外国人)もぱたっと止まりました。これが今もほぼ続いています。

国内旅行は4月から6月に8~9割減となり、その後もずっと一進一退でした。ここにきて「Go Toキャンペーン」に東京が加わり、感染状況も比較的安定し、かなりポジティブに転じています。前年の2倍の水準で動く日もあり、予約状況は非常に良くなっています。
数の割に取扱高が大きくならないという面はあります。近場の旅行でマイカー移動が圧倒的に多くなり、公共交通機関を利用していません。
それでも徐々に回復はしている。
9月の4連休も感染が急に拡大することはありませんでした。旅行はするが安全に気を付けようという動きが定着してきたと思います。ただ、上半期を数字で見ると厳しい。国内旅行の取扱額は前年の3割程度になりそうです。
下期の見通しはいかがですか。
国内に限れば10月から回復基調にあり、下期は前年並みの数字がつくれる可能性は十分あります。
海外はどうでしょう。JTBの努力で何とかできる範囲を超えていますが。
10月1日にビジネスを対象に入国制限を緩和したことは今後のステップになります。東京五輪に向けてインバウンドを取り戻そうとしており、来年度はそこそこの回復はする。五輪は旅行再開のきっかけになると考えています。
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