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キヤノンを国際ブランドに育て上げ、経団連会長を務めた後に経営の第一線に復帰。後継とみていた前社長の病気療養を受けて5月に再び社長に復帰した。コロナ禍で日本が進むべき道を聞いた。

(聞き手は 本誌編集長 東 昌樹)

(写真=的野 弘路)
PROFILE

御手洗 冨士夫[みたらい・ふじお]氏
1935年大分県生まれ。61年中央大学法学部卒業後、キヤノンカメラ(現キヤノン)入社。66年にキヤノンU.S.A.に赴任し、79年から社長を10年間務めて帰国。95年に社長に就任する。会長に就任して社長を退任した2006年から日本経済団体連合会会長を2期4年間務めた。12年に社長に復帰し会長兼社長CEOに。16年に会長CEOに戻るが、20年5月に再度社長に復帰し現職。85歳。休日に楽しむゴルフでは健康のため歩いてラウンドする。

コロナ禍で誕生した新政権に何を期待していますか。

 いっぱいありますよ。まずは政府のデジタル化。コロナ禍で皆、行政スピードの遅さを実感したでしょう。マスクがなかなか来ないとか、店や個人事業主の支援をスピーディーにやるべきなのに遅いとか。コロナ対策でぎくしゃくしていたのは、誰のせいでもなく、システムのせいなんですよね。電子政府化して、国と国民のコミュニケーションのスピードを上げるべきです。

 そのための大きな要素はセキュリティーナンバーです。日本の「マイナンバー」はあまり使われていないけど、米国では「ソーシャル・セキュリティー・ナンバー」が行き届いている。私は23年間米国で働いて保険料を納めていましたから、今でも年金が戻ってくる。移民の国だから、そういうところが明確でないと国を運営できないんでしょう。米国の行政能力は非常に高い。

基盤がしっかりしているんですね。

 マイナンバーなんて言うから秘密めいてしまうのかもしれません。いっそのこと「年金カード」にすればいい。持っていたら年金をもらえるとなれば、積極的に手に入れようとするでしょう。それに銀行口座をひも付ければ、年を取ってどこに口座があるか分からないなんてこともなくなる。

 その代わり、国が絶対に個人のプライバシーを守ると担保しなきゃいけない。日本だってその技術は十分にあるはず。それができれば、ある水準より所得が低い人たちを支援するといった政策をスピーディーに実行できる。

日経ビジネス2020年10月12日号 54~57ページより目次