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デジタル化を加速し、会社を変える機会としてコロナ禍を捉える日立。真のグローバル企業へ、経営のトップダウンとボトムアップの最適なバランスも探る。「利他」の精神を重んじる経営者が目指す日立の姿は。

(聞き手は 本誌編集長 東 昌樹)

(写真=的野 弘路)
PROFILE

東原敏昭[ひがしはら・としあき]氏
日立製作所社長兼CEO(最高経営責任者)。1955年徳島県生まれ。77年徳島大学工学部電気工学科卒業後、日立製作所入社。90年に米ボストン大学大学院コンピューターサイエンス学科を修了。2007年に執行役常務。日立パワーヨーロッパ社プレジデントや日立プラントテクノロジー社長などを経て、14年に社長兼COO。16年から現職。健康維持のため日々の散歩を欠かさない。

新型コロナウイルスの感染拡大が続いています。足元の事業への影響を聞かせてください。

 日立全体の売上高は8兆円規模ですが、5月末の決算発表では2021年3月期にコロナの影響で7兆円程度に落ち込むという見通しを出しました。ところが中国はいち早く経済が立ち上がりましたし、鉄道の工場がある英国やイタリアも動き出している。国内では家電など巣ごもりの需要が出ています。リモートワークの環境整備などに向けたIT(情報技術)投資も旺盛です。第1波の影響は当初の想定よりは小さいとみています。

 ただ、感染拡大がまだ収まりません。これはもう、3~4年は「ウィズコロナ」の時代が続く前提で物事を考えた方がいいんじゃないかと。足元の状況に一喜一憂せず、第2波、第3波の影響を見ながら経営していきます。

 コロナ禍になってすぐに「危ない」と思って1兆3000億円以上の手元流動性を確保しましたし、ウィズコロナ時代でもやっていける自信はあります。

3~4年程度は影響が続くと。その場合、何が経営に必要になりますか。

 ウィズコロナでデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速します。日立はこれまで、様々な社会課題をデジタル技術で解決する「社会イノベーション事業」を進めてきました。キーワードは2つ。顧客との「協創」と、データを「つなぐ」です。16年から本格的にやってきましたが、この方向性は間違っていなかった。コロナ禍で、協創とデータをつなぐというのがさらに進みます。さらに、「リモート」「非接触」「自動化」の3つのリクエストがものすごい勢いで来ている。より人間に不自由がないよう人間中心の対応が必要になっています。

人間中心となると、日立のアプローチも変わるのでしょうか。

 人の不自由さや不便さを、本当に顧客の気持ちになって聞かなくてはいけません。「共感力」が必要です。それも日本だけでなく、世界中の色々な地域でそれぞれのニーズを拾い集めることが重要になる。宗教や政治などのバックグラウンドの違いをよく認識しながらソリューションを見いだすことがポイントになります。

日経ビジネス2020年8月3日号 54~59ページより目次