新型コロナウイルスの影響で4月以降の訪日外国人客は激減している。観光業を経済のけん引役にする順調な歩みが止まり、描いていた成長シナリオも白紙となった。コロナ後に向けて日本が観光立国をつくり直すための戦略を聞いた。
(聞き手は 本誌編集長 東 昌樹)

清野智[せいの・さとし]氏
1947年生まれ、宮城県出身。70年東北大学法学部卒業、日本国有鉄道入社。国鉄分割民営化後は東日本旅客鉄道(JR東日本)で人事部長、副社長を経て、2006年に社長に就任した。12年から会長を務める。18年3月に退任し、4月に日本政府観光局(JNTO)理事長に就任。
新型コロナウイルスにより観光業は深刻な状況にあります。訪日外国人客の現状はどうなっていますか。

外国からのお客さんは激減しています。1、2月はまあまあだったのですが3月に落ち込み、4月は2900人、5月は1700人と、いずれも前年の同じ月に比べ99.9%減りました。6月も苦しい状態が続いています。
言うまでもありませんが、各国が渡航制限で国を閉ざしています。これがどこまで続くのか。EU(欧州連合)が日本などからの渡航を徐々に緩和するといった動きが出ています。ですが、かつてと同じ状態にいつ戻るかというと、まだ見えていません。
JR東日本の社長だった2011年に東日本大震災で打撃を受けました。今回はまた違う大変さだと思います。
震災の際は東北エリア以外の方々が食料や水を持って自発的に助けに来てくださり、外国からも援助を頂きました。今回は漠然たる不安というか、いつ自分が感染するかもしれないという不安があって、助けに行くこともできない。パンデミックにはそういう怖さがあるんじゃないでしょうか。
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