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「ミスター牛丼」と呼ばれた安部修仁現会長の後継として43歳で社長に就任して8年。2019年2月期の最終赤字を脱し、前期は「超特盛」などがヒットして復活を印象付けた。これからどこに向かうのか。新型コロナへの対処とともに聞いた。

(聞き手は 本誌編集長 東 昌樹)

(写真=的野 弘路)
PROFILE

河村泰貴[かわむら・やすたか]氏
1968年大阪市生まれ。87年に広島県立広島皆実高校を卒業。「吉野家」で4年間のアルバイトを経て、93年に吉野家ディー・アンド・シー(現吉野家ホールディングス)に入社した。2007年にはなまる社長。12年に43歳で吉野家HD社長に就任した。14年には事業会社、吉野家の社長を兼務。名実ともに安部修仁氏(現吉野家HD会長)の後継者と位置付けられた。

新型コロナウイルスによるビジネスへの影響はどの程度出ていますか。「吉野家」は4月の既存店売上高が前年同月比96%と軽微にも見えます。

 非常に深刻ですよ。吉野家は月次はよく見えますが、HD傘下にある、うどんチェーン「はなまるうどん」やすしチェーン「京樽」は売上高が40%台に減っています。テークアウトが難しいはなまるは200店舗近くが休業しました(5月11日時点)。吉野家も4月は20日前後まで前年超えですが、それ以降は前年比8割前後と苦戦しています。

 2月末に事業会社の予算を確定しましたが、3月の第1週に投資を一時凍結することにしました。出店も改装もやめ、出ていくお金を止める。最初に極端なくらい蛇口を閉め、徐々に緩めていく方が前を向けると思います。

外食が苦境を抜け出すヒントはどこにあるのでしょうか。テークアウトがにわかに注目されています。

 テークアウトやデリバリーではカバーできません。何が解となるのか、誰にも分からない。とにかくスピードのある意思決定を心がけています。検証をして行動することが今はできない。仮説に基づき、反射神経を研ぎ澄ませ、速やかに決めることが求められています。

 政府が一斉休校を要請した際、真っ先に休業店舗の従業員の給与補償を決め、店舗には営業時間を短くしてもいいと伝えました。昼食に悩む家庭の子供向けに持ち帰り商品を80円引きにしました。家庭に子供がいるかどうかはお客さんを信じることにしました。

日経ビジネス2020年5月25日号 64~67ページより目次