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既存事業を維持しながら、変化に対応した新規事業を起こす「両利きの経営」を提唱する。成功を重ね、成熟している大企業こそが、生き残るために求められる課題だろう。明日が見えない時代に欠かせない経営の要諦を聞いた。

(聞き手は 本誌編集長 東 昌樹)

(写真=村田 和聡)
PROFILE

チャールズ・オライリー[Charles A. O'Reilly]氏
「両利きの経営」を提唱した、米国を代表する組織経営学者。米カリフォルニア大学バークレー校でMBA (情報システム専門)、組織行動論の博士号(Ph.D.)を取得。同校教授、米ハーバード大学経営大学院や米コロンビア大学経営大学院客員教授を経て、米スタンフォード大学経営大学院教授。コンサルティング会社、Change Logic社の共同創業者兼会長も務める。

いくつもの著書で「両利きの経営」を提唱しておられます。大企業病を打破する効果があるといいますが、どんな概念なのでしょうか。

 成熟した企業が持つ資産やスキルを活用しながら競争力を失いつつある既存事業を継続し、新規事業もうまく成長させるためのやり方です。戦略論や知識経営論は経営が何をすべきかを示しますが、どうすべきかを示さない。それを指し示すのが「両利きの経営」。既存事業が技術や環境の変化で競争力を失う中、会社として成長を続けるために何をどうすべきかを提示します。

なぜ今、両利きの経営が必要なのでしょう。

 世の中の変化のスピードが速くなっています。技術、規制、そして消費者の嗜好の変化が加速している。変化に直面すると、大企業が衰退し始める割合が高まることが分かっています。

 あるコンサルティング会社の調査では2015~25年の間に、米国の経済誌フォーチュンの売上高ランキングに入っている米国の大企業500社のうち、半分が脱落すると予測していました。倒産ということではなく、長期的な衰退に入るという意味です。大企業がいかにして成長分野に移行するかが、ますます重要になっているのです。

日経ビジネス2020年3月23日号 94~97ページより目次