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天才、異才のエンジニア集団を率いて日本のAI(人工知能)開発をけん引する。トヨタ自動車やファナックなど日本の大手企業とタッグを組み、デジタル革新にひた走る。停滞感が漂う日本が変わるにはどうしたらいいのかを喝破する。

(聞き手は 本誌編集長 東 昌樹)

(写真=的野 弘路)
PROFILE

西川 徹氏[にしかわ・とおる]氏
1982年生まれ。2006年、プログラミングコンテスト世界大会に出場した仲間6人でプリファード・インフラストラクチャー(PFI)を設立、社長に就任。07年東京大学大学院情報理工学系研究科修士課程を修了。14年3月、深層学習にフォーカスして事業に取り組むため、プリファード・ネットワークス(PFN)を設立。社長に就任し、現在に至る。趣味は声優の水樹奈々さんの追っかけ。東京都出身。37歳。

プリファード・ネットワークス(PFN)はAIの中核技術とされる深層学習に強みを持っていますね。人間の脳の神経回路を模したこの技術に注目したのはなぜですか。

 PFNを立ち上げる前に検索エンジンを開発する「プリファード・インフラストラクチャー(PFI)」という会社をやっていたのですが、そのとき、機械学習と呼ぶ技術に出合いました。

 検索エンジンでは人が日常的に使う自然言語をコンピューターに処理させる技術が重要になります。その処理に機械学習を使えば、データからルールを勝手に抽出してくれる。私としては、これはプログラミングのパラダイムそのものを変えるんじゃないかと期待しました。すると、今度は機械学習の中でも深層学習と呼ぶ技術が出てきた。物体を認識する精度を一気に上げる手法でした。これは何かすごいことが起きつつある。そう感じたのです。

それが2014年のPFN設立につながった。そのときは、もう絶対にこれしかないという確信があったんですか。

 確信というか、それしかありませんでした。当時、(あらゆるモノがネットにつながる)IoTがはやり始めていました。データの種類が(人がネット上でやり取りするような)テキストデータだけでなく、機械が生み出すデータも増えていくようになったのです。ただ、製造業のお客様は機械からデータを取る必要性は分かっていても、そのデータの生かし方に悩まれていた。深層学習とIoT。この2つの変化の波をうまく融合できたらチャンスに変えられる。今までのゲームをひっくり返せるんじゃないかと思ったんです。

日経ビジネス2020年1月20日号 70~73ページより目次