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60年以上にわたり経営の最前線に立ってきた自動車業界の「レジェンド」。国内事業では完成検査不正、インド市場では景気減速で販売不振にあえぐ。100年に1度の大変革期といわれる業界の行く末をどう読むのか。

(聞き手は 本誌編集長 東 昌樹)

(写真=陶山 勉)
PROFILE

鈴木修氏[すずき・おさむ]氏
1953年中央大学法学部卒、銀行勤務を経て58年に鈴木自動車工業(現スズキ)入社。73年専務取締役、78年社長。インド市場などの開拓で5000億円ほどだった売上高を3兆8000億円に成長させた。2008年会長兼社長、15年に社長の座を息子の鈴木俊宏氏に譲った。思い入れのある車はホープ自動車から製造権を購入して開発した「ジムニー」。軽トラックの荷台を店舗に見立て開かれる朝市「軽トラ市」では握手攻めに遭う。岐阜県下呂市出身。89歳。

自動車産業はこれまでにない大変革期を迎えています。これはスズキにとって危機なのか、それともチャンスなのか。どのように捉えていますか。

 トヨタ自動車の豊田章男社長も「100年に1度の大変革期」とおっしゃいますね。英国で起きた産業革命に、ヘンリー・フォードがコンベヤー式で実現した大量生産。今の自動車産業はそれらと匹敵するぐらい大きく変わりつつあります。「車は動く住宅だ」と私は前々から言っていましたが、それどころではなくなっています。車からの情報が手に取るように分かるようになりました。

 日進月歩の変化で、まったく新しい局面を迎えているわけで、自動車業界にとってもチャレンジするチャンスだと思いますね。この大変革期を通らない限り、業界自体がそもそも無くなってしまいかねないのです。

 チャレンジする方法があれば、チャレンジしたい。私は敗者になりたくない。だから生き残りを懸けて戦わなければならないのです。

現在の試練を乗り越えるためには、規模の大きさが必要になるのでしょうか。

 ですから自動車業界の各企業が大同団結して、まとまって事に当たるという方法があるのではないかということです。「統合」とか「併合」、「資本参加」とかいろいろな言葉に置き換えられますが、これまでもそれぞれの企業が独立しながら、系列が変わってきましたしね。

地球という1つの単位で考える

完成車メーカーだけじゃなくて、部品メーカーも。

 そう。裾野も含めて変わりつつある過程でしょう。

ここ数年は日本の自動車メーカー間の連携が目立っています。日本勢でまとまって戦うということなのでしょうか。

 いやいや、地球は1つですからね。米国や欧州、日本、東南アジアとか地域別に分けなくてもいい。地球という1つの単位で物事を考えておく必要があると思いますね。

トヨタとの資本・業務提携もそうした考え方があったからと。

 合併とか系列といった考え方を離れて、生き残りを懸けて、新しいシステムをグローバルで共有化していこうということです。トヨタさんも、協調と競争を分けるべきじゃないかと考えていらっしゃる。私もその通りだと思っていますね。

将来的に一緒の会社になるわけではないと。

 それぞれの企業が特色を出しながら、協調し、競争していく。これは夢がある発想なんですね。

日経ビジネス2020年1月13日号 74~79ページより目次