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かつて『ジャパン・アズ・ナンバーワン』を著した東アジア研究の権威。米中対立を危惧する一方、東アジアの安定には日本や中国の正しい歴史認識が必要と説く。国家間の良好な関係は、個人的な友情関係があってこそだという。

(聞き手は 本誌編集長 東 昌樹)

(写真=吉成 大輔)
PROFILE

エズラ・ヴォーゲル[Ezra Vogel]氏
1930年米国生まれ。58年米ハーバード大学で博士号(社会学)取得。67年に同大学教授、72~77年同大東アジア研究所長を務める。79年に出版した『ジャパン・アズ・ナンバーワン』(ティビーエス・ブリタニカ)は日本でベストセラーに。2013年には10年かけて執筆した『現代中国の父 鄧小平』(日本経済新聞出版社)を出版。19年12月19日に『日中関係史』(日本経済新聞出版社)を出版予定。

世界を見渡すと、米中が鋭く対立するなど、グローバリゼーションが岐路に立たされています。長年、日本や中国を中心に東アジアを研究してきたヴォーゲルさんは今、世界をどのように見ていますか。

 移動やコミュニケーションの技術があまりにも発達したことで、世界の関係が複雑に絡み合うようになり、どの国も自分のやり方を押し通すことが難しくなっていると思います。そのような状況で、米国ではトランプ大統領が、国内の様々な不満を抱えている人たちから支持されて「米国第一」を掲げています。米国が世界に対して、十分な責任を果たそうとしないのは非常に困ったことです。

 第2次世界大戦以降、米国は国際機関づくりを主導してきました。ところが、環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱などを見ていると、米国に頼ることができるのか疑問に思います。

 ただ一方で、2020年の大統領選挙に向けて、少し状況が良くなる可能性はあります。その変化に備えて、他の国はできるだけ準備をすべきです。日本は他の加盟国と相談して米国をTPPに参加させるように持っていくということも考えるべきかもしれません。

 僕は中国人の友だちに、米国のいい面はやはり民主主義にあると説明しているんですよ。民主主義のいい面は、いくら大統領がおかしなことをしても、国民が動いて事態を好転させる可能性があることです。独裁の国はそうはいきません。だから、米国が完全にだめだとも思わないんです。

日経ビジネス2019年12月9日号 86~89ページより目次