京都学園大学(4月に京都先端科学大学に改称)に私財100億円以上を投じ改革を始めた。偏差値主義に偏り、社会で即戦力にならない大学教育は間違っていると言う。日本経済立て直しは教育から。カリスマ経営者はそう訴える。

(聞き手は 本誌編集長 東 昌樹)

(写真=菅野 勝男)
(写真=菅野 勝男)
PROFILE

永守 重信[ながもり・しげのぶ]氏
1944年生まれ。67年職業訓練大学校(現・職業能力開発総合大学校)電気科卒。ティアックなどを経て73年に日本電産を創業、社長に就任。経営不振企業のM&A(合併・買収)などを通じて世界一のモーターメーカーに育てた。2014年から会長兼務、18年6月社長職を譲り、会長CEOに。私財100億円以上を投じて京都学園大学(現・京都先端科学大学)の改革に乗り出し、同大学を運営する京都学園(現・永守学園)理事長に就任した。

昨年3月、京都学園大学を運営する京都学園(現・永守学園)の理事長に就任されました。「日本は大学改革が必要だ」と訴えておられますね。

 今から大学に入る学生なんて100歳まで生きる時代でしょう。そんな時代に、18歳の時の偏差値で人生を決めてどうするんだと言いたいわけです。

 今の教育は間違っていると思いますね。東京大学、京都大学……といったブランド主義が目立ちます。でもね、偏差値なんて結局、暗記とテクニックの問題なんですよ。だから予備校に行けば(ブランド大学にも)入れるわけ。でも予備校や家庭教師には金が掛かりますから、東大に入ろうと思ったらもう年収1000万円以下の家庭では難しくなっている。

 しかも、大学では社会に出て役に立つ教育をしていない。英語もしゃべれないし、経済・経営学部を出ていても決算書一つも読めない。工学部出身でも技術者としての専門性が足りない。それで大学出といえるのかと思いますね。

 こう言うと、永守さんが考えているのは専門学校じゃないかという人がいる。大学は基礎的なことを教えればいいんですというわけですよ。

 何を言っているのかと思いますね。今から60年、70年前は大学卒が少なかったから教養を身につける意味があった。「さすが大学出は違うな」と感じたものです。今は50%以上が大学に進学するけど、それが変わっていない。

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