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人生100年時代を迎え、生命保険に対する人々の期待が変わってきた。人口減、超低金利という逆風の中、どうやって成長を目指すのか。来店型の販売に乗り出す一方、データ時代への対応も加速させる。

(聞き手は 本誌編集長 東 昌樹)

(写真=陶山 勉)
PROFILE

清水博[しみず・ひろし]氏
1961年1月、徳島県生まれ。83年京都大学理学部卒業、同年日本生命保険入社。商品開発部長などを経て、2009年執行役員総合企画部長、13年取締役常務執行役員、16年取締役専務執行役員(資産運用部門統括、財務企画部担当)、18年4月から現職。国内に約1700人しかいない、統計学や確率論を基に保険の商品設計を担う専門職、アクチュアリー(保険計理人)の資格を持つ。趣味は演劇鑑賞、読書、水泳。

歴代社長の中では珍しい数学科の出身です。なぜ生命保険会社に入ろうと思ったのですか。

 本当は大学でずっと研究をして一生を終えるのが希望だったんですけど、大学院に入る試験に落ちてしまって。どうしようかと思いながら大学の事務室で卒業生名簿を見ると、生命保険会社に就職している先輩が定期的にいることが分かり、興味を持ちました。

 早速話を聞きに行くと「生命保険会社には数学的な知識を使って保険料を計算したり、将来の不確実性を予測したりするアクチュアリー(保険計理人)という仕事がある」と言われました。数学を使った仕事ができるのであればと思い、試験を受けました。

数学の面白さとは何でしょうか。

 私の専門は幾何学で、分類を通じて世の中を見ているようなところがありました。世の事象をひとつひとつ分類し、それを積み上げていくことで得られる達成感が心地よく、好きでしたね。

社長業に通じるところもありますか。

 自分は理屈で納得しないと先に動けない性分でして、部下にも号令をかけられない。そういう思考法が、一個一個解決しないと前に進むことができない数学的なプロセスに似ていると思います。上がってくる報告を聞いて、いいと思ったらもう任せますけど、こだわる所は細部まで突っこんだり、しつこく掘り下げたりしますね。

日経ビジネス2019年8月26日号 70~73ページより目次