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首都高の地下化が決まった東京・日本橋などで、新たな街づくりを推進する。成長が最優先だった20世紀型から、環境や景観に配慮した21世紀型になると説く。バブルも指摘される不動産市況には実需の裏付けがあると主張する。

(聞き手は 本誌編集長 東 昌樹)

(写真=竹井 俊晴)
PROFILE

岩沙 弘道[いわさ・ひろみち]氏
1942年生まれ。65年に慶応義塾大学法学部卒業、67年に同大大学院法学研究科を修了し、三井不動産に入社。95年に取締役・プロジェクト企画本部プロジェクト第一企画部長兼同建設部長、96年に常務・プロジェクト企画本部長兼同本部プロジェクト第一企画部長兼同建設企画部長、98年社長。2011年6月から会長。一般社団法人不動産証券化協会相談役、同不動産協会相談役なども務める。愛知県出身。77歳。

東京・日本橋で、首都高速道路の地下移設が決まりました。三井不動産は周辺に多数の不動産を所有しています。プロジェクトの進捗はいかがですか。

 国土交通省や首都高速道路会社などとの協議に着手していて、2020年東京五輪・パラリンピックが終わったら、設計や施工方法を具体化していく予定です。20年ぐらいかかるでしょうかね。

そんなにかかるんですね。

 どうせやるなら高速道路の地下移設だけでなく、やはり日本橋川を浄化して都心部のヒートアイランド現象の解消につなげたり、水辺の景観を整備して日本情緒を感じることができる空間を創り出したりすることにも挑戦したい。日本橋は江戸・東京のいわば発祥の地ですから。

 世界の主要都市では、20世紀における都市の発展の象徴だった高速道路が次々と地下化されています。米国のボストンでは、都心部の高速道路を埋設して、跡地を公園として整備する「ビッグ・ディグ」のプロジェクトが進行していますが、地価向上にもつながっているそうです。

20世紀に作ったものを再整備して、その価値をどう高めていくか。21世紀の不動産業にとって大きな仕事になるということでしょうか。

 こうした動きは経済についての価値観の転換を表していますよね。成長が最優先で、戦後復興を何としても成し遂げるという20世紀型のやり方は、これはこれで否定しないけれど、時代は変わりました。21世紀型の都市の魅力や価値は何なのかという観点からいくと、やっぱり環境であり景観だと思います。その象徴として、前回五輪に合わせて建設された首都高の高架橋を撤去して、青空をよみがえらせることが地元の悲願なんです。

日経ビジネス2019年8月5日号 84~87ページより目次