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投資回収、すぐには考えない

隣接ビルにあるとはいえ、ヨドバシカメラが店として入らない商業施設です。不動産会社のような開発はこれからもやろうと思っているんですか。

 あくまでヨドバシカメラに来るお客さんに喜んでもらえるようにするという考えです。ただ単に、店を広くすればいいというものじゃありません。だからわざわざそのために建物を建てるとか、用地を取得するとかじゃなくて、お客さんが喜ぶ品ぞろえをするためにやるということ。我々は不動産業じゃないし、今後も不動産業なんて頭にはないです。

今回の梅田以外に、東京・秋葉原や京都などでも自社物件で大型店舗を開いてきました。本拠地の東京・新宿をはじめ、主にターミナル駅前の一等地に店舗の土地や建物を「持つ」経営が特徴ですが、「持つ」ことにこだわってきたのでしょうか。

 不動産業は今、ものすごく景気がいいですよね。それだけ高い賃料を得ているから成り立っているわけです。でも我々からすれば、高い家賃を払って商売をするのは合理的じゃない。いくら家賃を払い続けても自分のものになるわけじゃないですから。

 もちろん、3年や5年で商売を考えているのならそれもありです。でも我々はもっと先を見て商売をしています。それなら自分で持っていたほうがいいのは明白です。

競合の家電量販店では、テナントとして身軽に出たり、入ったりすることもあります。長い目で見て、ということなんですね。

 それはもう20年、30年、50年先を見ていますから。投資をすぐ回収するなんて不可能だしね。もう腹を据えてやっていますよ。

1960年に創業された時から、その考え方は変わっていないのですか。

 僕は生まれが長野県の諏訪で、(JR中央線の)終点が新宿なんです。25歳で上京した当初はお金がなかったから、今の東京都庁の裏側の方に住まいだけ何とか確保して、見よう見まねでカメラの商売を始めました。

 行商というか、カメラを持っていって小売り屋さんに卸しに行ったんです。商売を始めて5年ぐらいして、この価格で、お客さんに直接売る方法はないかと考えた。それには駅のすぐそばで、お客さんが訪ねてきてくれるところに店を出したらいいんじゃないかと。そう考えて、建坪が十何坪の本当に小さい物件を買いました。それが今の新宿西口本店です。

 その頃から、規模は小さかったけれども、「自分の地べた」の上で商売をしたいと考えていました。自分の地べたの上だったらもうかっても、もうからなくても追い出されることはないからです。

「淀橋写真商会」として新宿駅西口で1号店を開業。小売りを始めた
日経ビジネス2019年7月8日号 52~56ページより目次