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年齢は42歳。メガファーマと呼ばれる世界の巨大製薬会社の中で随一の若いCEOだ。公衆衛生の医師として、アフリカなどで感染症対策の最前線に立った経験を持つ。十数万人の社員を束ねるリーダーが、あるべき医療の姿を語った。

(聞き手は 本誌編集長 東 昌樹)

(写真=山下 裕之)
PROFILE

ヴァサント・ナラシンハン[Vasant Narasimhan]氏
1976年生まれ、42歳。米国出身でインド人の両親を持つ。98年に米シカゴ大学を卒業後、2002年に米ハーバード大学医学大学院で医学博士号を取得。03年にハーバード大学ジョン・F・ケネディ公共政策大学院で修士号を取得、同年から米マッキンゼー・アンド・カンパニー勤務。05年にノバルティス入社、18年から現職。読書や家族旅行を好み、ジムトレーニングなどの運動も欠かさないという。既婚で2人の子供を持ち、普段はスイスのバーゼルで暮らす。

2018年2月、41歳の若さでCEO(最高経営責任者)に就きました。メガファーマ(巨大製薬会社)の経営者の中でも最も若いと思いますが、経営に年齢は関係ありますか。

 答えはノーです。大きな組織をリードしていくのに大事なのはリーダーシップと、自分の価値観、目的意識です。

 私が非常にラッキーだったのは、ノバルティスに入って、会社のことをよく学べたことです。研究開発が長かったですが、3つの事業部門でマネジメントも経験できました。

ご自身ではどんなリーダーシップが必要だとお考えですか。

 世界は複雑になっています。リーダーが全ての答えを持っているわけではない。社員がベストなアイデアを出してくれるようにするのがリーダーの役割ではないでしょうか。サーバントリーダー、奉仕型のリーダーですね。

 そのためにはリーダーは明確な方向性を示す必要があります。そして、社員が何かの困難に直面したら取り除く役割を果たす。リーダーは権威やパワーの象徴ではありません。

CEOに決まった時はどういう心境でしたか。

 まずは驚きですね。取締役会で私が候補者になっていたということ自体、驚きでした。

日経ビジネス2019年7月1日号 72~75ページより目次