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観光立国を宣言し、2020年に訪日観光客4000万人の目標を掲げる日本。五輪を控えて足元は順調に見えるが、受け入れ体制が十分とは言えない。日本旅行業協会の田川博己会長に、日本の観光業はどう変わらなくてはいけないのかを聞いた。

(聞き手は 本誌編集長 東 昌樹)

(写真=尾関 裕士)
PROFILE

田川博己[たがわ・ひろみ]氏
慶応義塾大学商学部卒。1971年、日本交通公社(現JTB)入社。川崎支店長、米国法人副社長などを経て、2000年に取締役営業企画部長就任。08年社長、14年会長に就任。同年からは日本旅行業協会(JATA)の会長も務め、日本の観光戦略の柱である訪日外国人の誘致に積極的に取り組んでいる。1948年、東京都出身。

2018年の訪日観光客数は3000万人を超え、政府が観光立国を目指すと宣言した03年の約6倍となりました。ここまで伸びた要因は何でしょうか。

 日本の自然や文化といった潜在的な魅力やアジアの経済発展が土台にありますが、大きな要因はビザの緩和とLCC(格安航空会社)の増加でしょう。訪日客誘致を目指して、日本はアジアを中心にビザの緩和を戦略的に進めてきました。中国やインドなどに対してビザの発給要件を緩めたり、手続きを簡素化したりした成果が出ています。

 そこにLCCが浸透しました。LCCはアジアから日本の多くの地方都市に飛んでいます。東京経由ではなく、旭川や高松に直接行っている。インバウンドはアジアが多いのは、これが理由です。LCCやチャーター便によって日本行きの座席が増えなければ、中国や韓国からこれほど多くの観光客は訪れていないと思います。

訪日客数の18年の伸び率は前年比8.7%でした。ここ数年の伸びに比べると成長が鈍化したようにも見えます。

訪日客は黙っていても増えるという。リピートが課題(東京・浅草)(写真=アフロ)

 今後もお客さんは間違いなく来ます。今年はラグビーワールドカップ(W杯)、来年は東京五輪・パラリンピック、そして再来年の21年には生涯スポーツの国際大会「ワールドマスターズゲームズ(WMG)」を控えています。これだけ世界的なイベントが続く国は他にありません。自信を持って言えますが、当面は黙っていても来ます。でも、「来てよかった」と思われないとリピートはしてもらえない。

日経ビジネス2019年6月24日号 78~81ページより目次