帝京大学ラグビー部を率い、チームを2017年度まで大学選手権9連覇に導いた。18年度は準決勝で天理大学に敗れたが、再び頂点を目指して、前を向いている。組織のつくり方、指導者に求められる資質を聞いた。
(聞き手は 本誌編集長 東 昌樹)

岩出 雅之[いわで・まさゆき]氏
1958年、和歌山県生まれ。選手としては、日本体育大学在学中に全国大学ラグビー選手権優勝、4年時は主将。80年に卒業後、滋賀県で教員となり公立中学、高校で勤務。89年から県立八幡工業高校ラグビー部顧問を兼ね、7年連続で花園に出場。高校日本代表監督を経て96年帝京大学ラグビー部監督に就任。2009〜17年度まで大学選手権9連覇に導いた。帝京大ではスポーツ医科学センターの教授も務める。
全国大学ラグビー選手権で前人未踏の10連覇を目指しましたが、準決勝で天理大学に敗れました。連覇が途切れた瞬間に何を考えたのでしょうか。
まずは勝った相手チームをたたえることだと思いました。奇麗事でも、負け惜しみでもありません。敗戦は苦いもの。ただ、敗戦も学生にとっては経験になります。結果を受け入れるためにも、勝者をたたえる姿を見せようと考えました。
そして相手だけでなく、学生たちをしっかりとたたえ、ねぎらうことだと思いました。大学選手権は1年間の積み重ねの結果なので、当然、勝って終わると達成感があるし、うれしい。しかし敗れても、やはり区切りになります。学生たちが人生の裏付けとなるものをつかむためにも、結果を認めて自分自身と向き合うことが、次への第一歩、スタートの瞬間になります。
試合後、グラウンドに降りた時の表情が柔らかでしたね。
私はあのとき、選手たちよりは余裕のある心理状態でしたし、長く生きてきた中での経験もあります。かけられる言葉は限られますが、笑顔で彼らを迎えることはできます。余裕がない時ほど悲愴(ひそう)な顔よりも笑顔で振る舞うべきです。何事も、笑顔で取り組んだ方が力を発揮できますしね。次は頑張るんだという笑顔もありますよ。
スポーツはお互いの頑張りがあって水準が上がるものです。大学ラグビー界、スポーツ界の進歩に貢献してきたと思いますし、学生にはしっかりと胸を張ってほしい。勝利だけではない成果も心に収め、しかし教訓もしっかりと得て、足りない部分を補うことにつなげていくことが大事だと思います。
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