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前回までのあらすじ

 スーパーマーケット、フジタヨーシュウ堂やコンビニチェーン、アーリーバードを傘下に抱えるアーリーバード&エフ・ホールディングス名誉会長の藤田俊雄は、甲府を訪れ、旧知のアーリーバードのオーナーの霊前に手を合わせる。そこでオーナーの息子から、人手不足で24時間営業に苦労していることや、スーパーに行けない高齢の客が、コンビニに割引販売を求めていることを、直接訴えられる。

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「他社のコンビニと話し合って棲み分けしたらどうかと思うのです。カルテルのようなもので違法なのかどうか検討しないといけませんが、コンビニが社会のインフラというなら許されるのではないでしょうか。共倒れで無くなってしまうよりマシでしょう」

 久々に会った甲府のアーリーバードのオーナーの息子は、自らの思いを語った。

 彼の案に俊雄はすぐに賛成というわけにはいかない。問題が多いことは間違いないからだ。

 しかしアーリーバードというよりコンビニの社会性と企業としての収益性とを両立させる道を考える必要はあるのだろう。

 彼は、人口減少、高齢化などで地域ごとの状況が大きく変化しようとしている今日、コンビニの在り方が全国一律でいいのかという課題を根底で突き付けているのだろう。

「よく検討します。良い意見をありがとうございます。これからも意見をどんどん言っていただき、共存共栄していきましょう。お父様の後をしっかりと引き継いでくださいね」

 俊雄は彼の手を取り、強く握りしめた。

「こういう機会でないと、なかなか私どもの意見を聞いていただくことができないものですから。申し訳ありません」

「分かりました。なんでもおっしゃってください。それからもう一度申し上げますが、本部とオーナーさんとは共存共栄です。元々、アーリーバードは小規模店とフジタヨーシュウ堂などの大規模店との共存のために始めたのですからね」

 俊雄は珍しく共存共栄を強く言った。企業が創業時の理念を忘れれば、滅びるだけだ。これは俊雄の信念だ。

「頑張ります。ご支援よろしくお願いします」

 彼は頭を下げた。

 俊雄は、彼の悩みは多くのアーリーバードのオーナーの悩みではないかと心を痛めた。なんとかしなくてはならないだろう。しかし果たして……。