それにしても90歳になるとは、随分と長生きしてしまったものだ。仏壇のオーナーの遺影を見つめる。彼だって84歳で亡くなったのに……。

「名誉会長に来ていただいて父も喜んでいると思います」

 オーナーの長男が神妙な顔で言う。

「葬儀に出られず、本当に申し訳ありませんでした」

 改めて詫びる。

「そんなことお気になさらないでください。アーリーバードのお蔭で、このように立派な家が出来、父も裕福に暮らすことができたのですから」

 亡くなったオーナーは、ガソリンスタンド経営に早々に見切りをつけ、アーリーバードのフランチャイズ店となった。今では山梨県内に7店舗も構えるまでになった。

「そう言っていただけると私も嬉しいです」

 俊雄は遺影を見つめて、目を細めた。彼の案内で何度か店舗を巡回した。彼は、いつも忙しく働き、店内、店外問わず清潔で整頓が行き届いていた。車の中に箒と塵取りが用意されており、俊雄を案内する際にも、それらを離さなかった。どうするのかと興味を持って見ていると、車から降りるや否や、店の入り口をさっと掃き清めた。小さなゴミが落ちていることや埃さえ許せないのだ。俊雄は、この真面目さが店舗数を拡大したのだと感心したものだった。

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