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前回までのあらすじ

 1980年代後半、藤田俊雄が率いるスーパーマーケット、フジタヨーシュウ堂では、専務の大木将史が「業革」と呼ぶ業務改革を断行し、業績を大幅に改善させる。子会社のコンビニエンスストア「アーリーバード」も3600店を超える店舗網を築く。日本では好景気が続き、土地や株が値上がりし、銀行は競うように不動産などへの融資額を増やしていった。誰もが繁栄を謳歌していた。

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 スーパーセイヨーの大館誠一の場合は、仲村よりもバブルに踊ったと言えるだろう。大館は、ビジネスに自分の美意識を持ち込んだ。俊雄や将史のようにどうすれば客に尽くせるかというシンプルな経営姿勢を持っていない。非常に複雑な人格であり、あらゆるビジネスがすべて文化のために存在していたのである。

 かつて俊雄に「あなたの仕事には文化がない」と言ったのはその表れだった。文化では満腹にはならない。だれもが腹を満たすために安い食材を求めてスーパーに駆け込む時でも、大館は文化を意識していた。