日本各地で今、企業が建設して運営も手掛ける「民設民営」のスポーツ施設が続々と開業している。プロスポーツクラブなどと一体運営し、施設の活用法や周辺ビジネスの展開で知恵を絞る。スポーツビジネスの裾野を広げ、地域活性化にもつながる成長産業として、脚光を浴び始めた。

JR長崎駅から徒歩約10分の好立地に、サッカースタジアムや多目的アリーナなどの建設が進んでいる。通信販売大手のジャパネットホールディングス(HD、長崎県佐世保市)が長崎市で進める大型複合施設「長崎スタジアムシティ」プロジェクトだ。同社は約800億円を投下し、約2万席のサッカースタジアム、約6000席のアリーナのほか、243室のホテル、約90店のショッピングモール、11階建てのオフィスビルなどを2024年に開業する。売上高約2500億円のジャパネットHDにとっては過去最大の投資事業だ。
開業後のスタジアムをサッカーJリーグJ2のV・ファーレン長崎が、アリーナをバスケットボールBリーグの長崎ヴェルカが本拠地とする。両クラブとも、ジャパネットHD社長兼最高経営責任者(CEO)の髙田旭人氏が会長を務めている。

「通販に次ぐ柱」とする理由
日本各地で今、企業が建設して運営も手掛ける「民設民営」のスタジアムやアリーナの開業や事業計画が相次いでいる。日本では長く、これらのスポーツ施設は自治体などが所有する公共施設が中心だった。利益を上げる意識は薄く、税金をムダ遣いする「ハコモノ行政」の象徴として批判されることも多かった。
流れが変わったのは、03年の地方自治法の改正による指定管理者制度の導入だ。プロスポーツクラブなどが相次いで公共のスポーツ施設の管理・運営に参入。経費削減のノウハウを蓄積し、サービス向上の取り組みも進んだ。民設民営のスポーツ施設の増加はこの延長線上にある。
国もスポーツ施設の収益化を後押しする。欧米では集客力があるスポーツ施設を核とした街づくりが進んでおり、経済産業省やスポーツ庁が成長戦略の一環として、スポーツ施設に経営の視点を持たせる「スタジアム・アリーナ改革」を推進。長崎の取り組みはそのモデルケースだ。
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