メーカーによる品質不正が相次いで発覚し、全国規模で供給不足に陥った後発医薬品(ジェネリック)。医療費抑制の名の下、特許切れ医薬品市場での数量シェア拡大を優先し、品質管理が後手に回った。問題は、古い品目の赤字を新製品で補う事業モデルにある。公的薬価制度の抜本改革が欠かせない。
発端は2020年11月24日、東北地方のある公立病院で爪水虫薬の服用による副作用が発生したとの報告が、福井県あわら市にある後発医薬品(ジェネリック)メーカー、小林化工の安全管理部に上がってきたことだ。

症状は「動悸(どうき)」で、その薬の副作用として知られていたものだ。だが、翌日には「記憶がなくなる」「錯乱」といった副作用が別のところから報告された。その後も、めまいやふらつきなどの報告が相次いだため社内調査すると、誤って睡眠薬の成分を混入していたことが発覚──。
相次いでいるジェネリックメーカーによる医薬品医療機器等法(薬機法)の違反。世間の耳目を集めるきっかけとなった小林化工の事案は、このようにして始まった。
その後、服用した2人が死亡し、服用者による交通事故も発生した。厚生労働省と福井県などは合同で立ち入り調査を行い、21年2月に福井県は小林化工に116日間の業務停止命令などの行政処分を行った。
医療用医薬品という、製造業の中でもとりわけ厳密な製造管理、品質管理が法令で定められている製品で生じた事態にあぜんとしたが、その後も左の表に示した通り、今に至るまでジェネリックメーカーで薬機法違反は相次いでいる。
中でも業界で驚きを持って受け止められたのは、20年3月期に約1900億円の売上収益を上げ、ジェネリックで国内最大手となった日医工が行政処分を受けたことだ。
各社で発覚した薬機法違反は事例によっても異なるが、おおむね①国から承認された製造販売承認書(以下、承認書)に記載されているのとは異なる方法で製造した②品質試験データのねつ造など検査に不正があった③法令に定められた管理体制に不備があった──などだ。
ジェネリックメーカーからは、「睡眠薬の混入やデータのねつ造は論外だが、承認書と異なる方法での製造というのは、現場で何とかいい薬をつくろうと努力した結果、生じた面もある。原薬や機械の調子はいつも同じだとは限らない。もう少し現場の柔軟性が認められてもいいのではないか」といった声も漏れる。
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