システム障害続発の責任を取り、トップが交代したみずほフィナンシャルグループ。木原正裕社長が就任し、問題の真因とされた社風改革に取り組んできた。負の連鎖に終止符を打ち、市場の信頼を回復できるのか。現状を探った。

(写真=共同通信)
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 「昨年から若手がごっそり抜けた。コンサルティング会社に移った人が多そうだ」。みずほ銀行で営業を担当する40代の男性行員はこうつぶやく。

 銀行の人事制度は基本的に年功序列で、若い入行年次で裁量を持って働くのは難しいとされる。一方、コンサル業界は早くから幅広い業務に携わることができ、裁量権も大きい。若手がどちらを望むか、論をまたないだろう。

 しかし、みずほフィナンシャルグループ(FG)に限れば、人材流出には「社内の雰囲気」も響いたかもしれない。2021年、相次ぐシステムトラブルを受け金融庁から同年11月に業務改善命令を受けた際は、問題の真因として「IT(情報技術)や営業の現場の実態軽視」「言うべきことを言わない、言われたことだけしかしない姿勢」などを列挙された。

記者会見で説明する坂井辰史社長(左、当時)(写真=日刊工業新聞/共同通信イメージズ)
記者会見で説明する坂井辰史社長(左、当時)(写真=日刊工業新聞/共同通信イメージズ)

 みずほFGは坂井辰史社長が退き、予定より前倒しで木原正裕執行役を後任に回した。その理由は「こまめに現場入りし、周囲から『兄貴』と呼ばれるほど社員との距離感が近い」(みずほFG幹部)木原氏の手腕に懸けたからだ。

 それでも失った市場の信頼、経営陣の求心力は一朝一夕に元には戻らない。メガバンクグループで三井住友FGと激しい2位争いに臨んでいたが、業務改善命令の後は追いつかなくなった。みずほFGについて「システム障害から立ち直っても、しばらく我慢の時間が続く」(金融庁幹部)とみる声は珍しくない。

注:各社決算資料から作成。各四半期までの累積。三菱UFJの22年度分は傘下の米地銀MUFGユニオンバンクの株式譲渡時に戻し入れとなる特別利益を勘案した
注:各社決算資料から作成。各四半期までの累積。三菱UFJの22年度分は傘下の米地銀MUFGユニオンバンクの株式譲渡時に戻し入れとなる特別利益を勘案した
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 22年1月に金融庁に提出した業務改善計画については、施策の具体化と運用までほぼ完了した。これまでのところ、負の連鎖は止まりつつあるように見える。21年は2月に4318台のATMで障害が発生して以降、システム障害が毎月のように発生した。しかし22年度に入ってからは、11月に外部回線ネットワークの障害によりピーク時に24台のATMが最長14分停止しただけだ。

 みずほFGの勘定系基幹システム「MINORI」について、危機管理を担当する河本哲志執行役員は「壊れた部分だけが止まり、それ以外は安定的に稼働し続ける仕組みだったので対応を見誤った」と振り返る。

 実際は一部のシステムで発生したトラブルが、他の部分にも飛び火して被害が拡大した。MINORI自体の点検を進めつつ、システム運用に詳しい社員を戻したことで「本来の機能が発揮できるようになった」(河本氏)という。