急速に普及したテレワークの恩恵で、人は場所に縛られず、自由に働けるようになった。ただ、せっかくできた空き時間が、急増するリモート会議で埋め尽くされる人も少なくない。なぜ集まるのか──。今こそ、「薄い会議」の撲滅運動を起こす時が来た。

社内に配信スタジオを持つNECネッツエスアイ。動画保存は会議削減にもつながる(写真=陶山 勉)
社内に配信スタジオを持つNECネッツエスアイ。動画保存は会議削減にもつながる(写真=陶山 勉)

 「役員の働く時間の8割が会議。3割まで減らそう」

 NECネッツエスアイの牛島祐之社長兼CEO(最高経営責任者)は2022年9月末、号令を下した。新型コロナウイルスの感染拡大以降に会議が急増し、顧客や社員とのコミュニケーションを通じて「現場」を把握する時間が減ったためだ。

 同社は17年にオンライン会議システム「Zoom(ズーム)」の日本初の販売代理店となり、いち早くテレワーク制度を導入した。そんな先進企業でさえ、コロナ禍の在宅勤務の増加によって、会議にまつわる3つの「副作用」が出てしまった。

 一つは残業時間の高止まり。リモート会議が一般化し、社内のITシステムで空き時間を確認して会議を設定する習慣が根付いた。オフィシャルな会議に求められる資料を作成するために夜遅くまで働く人が増殖し、会議の数も膨張した。

 2つ目は中間管理職の多忙化だ。テレワークで日常的な接点が減った社員と対話する時間がより求められる中で、上長が集う会議や現場メンバーとのミーティングなどに参加を求められる。同社では部長以上の労働時間も大幅に増えており、生産性の低下につながるリスクがある。

 3つ目はセレンディピティー(偶発的な出合い)の減少。リモート会議は話し手の話を傾聴し、目的外の発言は場を乱すという雰囲気がある。雑談のような無駄話がなくなり、既存業務の枠からはみ出た取り組みについて議論する機会が減った。テレワークで個人の働き方の自由度が増した一方で、組織は硬直化しつつあったのだ。

Zoom常時接続で虚実融合

 NECネッツエスアイが直面した課題は、多くの企業が共感するところだろう。リクルートワークス研究所の辰巳哲子氏は、「会議の数が増えたことで、これまで無自覚だった『会議の目的』を多くの人が意識するようになった」と指摘する。

 会議だけでなく、社内コミュニケーションを取り戻すべく、再び「出社」に切り替える企業も多い。だが、NECネッツエスアイが出した答えは「リモートの良さを残しつつ、会議のあり方を変革する」だ。会議時間をスリムにすると同時に、中身の質を高めるため、大きく2つのテーマを基に対策を取った。

 一つは、報告の簡素化だ。会議の多くは「上司への報告目的」。別の手段に置き換えようと、社長自身もクラウドで共有した資料で確認するように動いている。会議の時間設定を5分単位とし、資料は作成に時間がかかるパワーポイントではなく、メモで済ませるよう推奨した。